月のうさぎと地上の雨男
映画は予想よりも静かなトーンで話が進み、ふと渡が隣を見ると、凪が涙目でスクリーンを見上げていた。
カバンからハンカチを取り出して渡すと、凪は黙って目元を押さえた。
見回すと、同じように静かに涙を流しながら観ている女の子ばかりだった。
映画が終わり、シアター内がゆっくりと明るくなる。
まだ目元の赤い凪が照れた顔で渡を見上げた。
「ハンカチありがとう。洗って返すね」
「そのままでいいよ」
「よくない。ちゃんと洗って返す。ね、カフェ行こうよ。すごく良かったから感想言いたい」
「うん、凪が楽しんでくれてよかった」
「あとポップコーンがあればなー」
「そんなに食べたかった?」
「食べたかった!」
渡は少し考えてから立ち上がった。
凪も立ち上がって、一緒に映画館を出た。
カフェで凪の感想を聞きながらコーヒーを飲む。
落ち着いたところで凪が手洗いに向かったので、残った渡は猿渡に声をかけた。
「……って、できますか?」
「可能でございます。ありがとうございます、お嬢様に気を遣っていただいて」
「気遣いっていうより、好きな子に喜んでほしいだけです」
「ぜひ、お嬢様に直接お伝えください」
凪が戻ってきて、渡は席を立った。
「渡くん、帰る前に一個やりたいことがあるんだけど」
「なに?」
「プリクラ撮ってみたい」
「いいよ、行こう」
映画の半券にプリクラが割引で撮れると書いてあったため、渡と凪は映画館まで戻った。
すぐ隣はゲームセンターで、プリクラの筐体が並んでいた。
「……いっぱいある」
「そうだね。撮りたいのある?」
「撮ったことないから、わかんないな」
「俺も初めてなんだよね。プリクラのエリアって男だけじゃ入れないからさ。空いてるのにしようか」
「一緒に来る女の子とかいないの?」
「いない」
「そっかあ」
凪はやけに嬉しそうにカーテンの中に入っていく。
『は〜じ〜ま〜るよ〜』
のんきなアナウンスが響き、撮影が始まった。
何枚か撮ったあと、反対側に移動する。
「わあ、かわいいねえ」
「俺の目が……」
渡は補正された画像を見て引きつった。二人の目がやたら大きく、キラキラに加工されていた。
「えっとねー、名前と日付と……何書こうかなあ」
はしゃぐ凪に落書きを任せ、渡はその様子を眺めた。
「できた! 渡くん、半分こしよう」
「うん。……凪」
「なあに?」
プリクラを切っていた凪は半分を渡に差し出す。
「好きだよ」
「え、なに、いきなり。私も好きだけど」
「凪が笑ってると、嬉しいって思ったんだよね」
「なにそれ」
「そのままだよ」
渡は真っ赤な顔の凪の手を取って、駐車場に向かった。
カバンからハンカチを取り出して渡すと、凪は黙って目元を押さえた。
見回すと、同じように静かに涙を流しながら観ている女の子ばかりだった。
映画が終わり、シアター内がゆっくりと明るくなる。
まだ目元の赤い凪が照れた顔で渡を見上げた。
「ハンカチありがとう。洗って返すね」
「そのままでいいよ」
「よくない。ちゃんと洗って返す。ね、カフェ行こうよ。すごく良かったから感想言いたい」
「うん、凪が楽しんでくれてよかった」
「あとポップコーンがあればなー」
「そんなに食べたかった?」
「食べたかった!」
渡は少し考えてから立ち上がった。
凪も立ち上がって、一緒に映画館を出た。
カフェで凪の感想を聞きながらコーヒーを飲む。
落ち着いたところで凪が手洗いに向かったので、残った渡は猿渡に声をかけた。
「……って、できますか?」
「可能でございます。ありがとうございます、お嬢様に気を遣っていただいて」
「気遣いっていうより、好きな子に喜んでほしいだけです」
「ぜひ、お嬢様に直接お伝えください」
凪が戻ってきて、渡は席を立った。
「渡くん、帰る前に一個やりたいことがあるんだけど」
「なに?」
「プリクラ撮ってみたい」
「いいよ、行こう」
映画の半券にプリクラが割引で撮れると書いてあったため、渡と凪は映画館まで戻った。
すぐ隣はゲームセンターで、プリクラの筐体が並んでいた。
「……いっぱいある」
「そうだね。撮りたいのある?」
「撮ったことないから、わかんないな」
「俺も初めてなんだよね。プリクラのエリアって男だけじゃ入れないからさ。空いてるのにしようか」
「一緒に来る女の子とかいないの?」
「いない」
「そっかあ」
凪はやけに嬉しそうにカーテンの中に入っていく。
『は〜じ〜ま〜るよ〜』
のんきなアナウンスが響き、撮影が始まった。
何枚か撮ったあと、反対側に移動する。
「わあ、かわいいねえ」
「俺の目が……」
渡は補正された画像を見て引きつった。二人の目がやたら大きく、キラキラに加工されていた。
「えっとねー、名前と日付と……何書こうかなあ」
はしゃぐ凪に落書きを任せ、渡はその様子を眺めた。
「できた! 渡くん、半分こしよう」
「うん。……凪」
「なあに?」
プリクラを切っていた凪は半分を渡に差し出す。
「好きだよ」
「え、なに、いきなり。私も好きだけど」
「凪が笑ってると、嬉しいって思ったんだよね」
「なにそれ」
「そのままだよ」
渡は真っ赤な顔の凪の手を取って、駐車場に向かった。