悲しいくらいに青い空が、夜に溶けるまで

第四話 知らないキミは誰?


【知らないキミは誰?】

『元気か??』

トークに入った知らない名前からのメッセージ。

私は辛くて、何も考えずにメッセージをしていた。
心の痛みは指先から止まらないスピードで文字を打った。

「辛いの…。」

それに丁寧に相談にのってくれたその人は、その後私が彼の送った友達とは違うことを告げると、初めはビックリし少し戸惑ってもいたが、その次の日もメッセージが届いた。

『名前はキミオと言います。27歳独身です笑良かったら仲良くなろ』って…

嬉しかったのと、何故だか胸の奥がきゅんとなって日常が色付いたのが分かった。
それから毎日、キミ君との秘密のやり取りが始まった。



……。名前を呼ばれた気がして後ろを振り返る。

「寒かっね。遠かったでしょ?」
そう言って、今時風の爽やかな男の子が私の足元の大きな荷物をしょいと担いだ。
華奢な体、細身なのにガッチリと筋肉があるのが見てとれた。
学生時代野球していたって言ってたし、今も運動するのが好きだと言っていたのを思い出した。スポーツが得意なんだろうな…と想像できた。サラサラの髪の毛は、少し赤いが派手さはない。陽の光で焼けたもののようで、加工的な色ではなかった。

えっと…っと思って彼を見る。
一回だけ目が合ったが、余りにイケメンさんだったから私は恥ずかしくなって顔を伏せた。

「 さーちゃん、ほら行くよ!」
そう言うと、私の意思はお構い無しに私の手を握ってベンチから立たせた。
いきなり繋がれた手は大きく、それでいてスッキリと細い指だった。
そして何よりも温かかった。
男の人なのに、手の柔らかいことに気がついてしまった私はさっきよりもドキドキしながらもう一度彼を見ると、フッと笑顔になった彼を見た。
「さーちゃん、すぐ分かったよ。」
歯に噛む笑顔…
あぁ、もっとキミ君に触れていたい。
そう思ってしまって恥ずかしかった。
誰かに触れた、誰かの体温を直接感じたのはいつぶりだろうか…

「近くに車を止めてあるんだ。ちょっと歩くけど行こうか。」
見知らぬ場所の殺伐とした風景、外気温に冷やされた歩道が寒々しい。
行き交う人の歩く速度もどこか冷たさを感じてしまう。
その中で私だけは違っていた。
彼の手が、今から始まる未知の世界への小さな不安と罪悪感から引っ張ってくれている様だった。
その手の温もりは、指先から少しずつ少しずつ私の体全体を浸食して、心の奥がジュウと音をたてているかのよう。
火照った顔が上げられない…
私が熱を上げるのは、今隣にいない夫ではなく今日初めて会ったキミだった。
私は既婚者…
その現実さえ、忘れてしまいたいくらい意識が甘い甘いキミに夢中になっていくのだった。

恥ずかしいのと嬉しいのと。
体全体の熱に外の世界の寒さなどは気にもならなかった。
彼が、間違えたりすることなく私に声をかけて見つけてくれた事が嬉しくてたまらなかった。

騒がしかった音色達が次第に音をなくしていく。
私とキミ君の呼吸と、私の高鳴る鼓動だけが響き渡っていった。
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