悲しいくらいに青い空が、夜に溶けるまで

第六話 ココアよりもキミの温度で

【ココアよりもキミの温度で】

どれくらい車は進んだのだろう。
車はコンビニに駐車した。
「不足してる物を買ってくるけど、何かいる?」
私は首を横にふって、彼が出ていく姿を見送った。

足りない物を買い足しに出ていくキミ君を見送りながら、リアルの自分には足りないモノが多いなって改めて思った。
愛情ない夫に求めた温もり。
いつの頃からか取り戻す事は不可能になって、私はその足りなくなった夫の愛情を小さな子供の様に最初の立ち位置で待っていたんだ。
寒かったし、痛かったし、苦しかった。
本当は足りない愛情も温もりも、待っていても戻ってこない事を大人になった私は分かっていたからこそ逃げ出したかった。ぶち壊してしまいたかったんだ…

はぁ…
深いため息。
間違っている事をしていること、痛い程分かっていてもキミ君の優しさに心癒されていく自分が止める事ができなくなっていた。
道中、色々な話をしてくれる彼。
会話の速度は、人見知りの私に合わせて上手く言葉のキャッチボールをしてくれた。
けれど、そんなキミ君の言葉達はドキドキしすぎて頭パニックの私には、少しも頭に残っていない。ここまで数分の時間が、何時間も経ったようなそんな感覚になっていた。

隣にいるのは、私より10歳も年下の彼。
私の方が10年もお姉さんだと言うのに、頼もしく私をリードしてくれて優しく包み込んでくれていた。
その事で私はガチガチに固まった肩の荷が解けていくのを感じた。
自分への後ろめたさや、弱さの心の隙間にキミ君が愛情というカタチのないモノを注いでくれていたからだと思った。
これから、この人と一緒に時間を過ごすと私はどんなに柔らかくなれるのだろう…
ふにゃふにゃになってダメになってしまうのではないか?
それでもそんな自分も見てみたい様な気がする…

1人の空間、一気に押し寄せる頭の情報がぐるぐると回って分からなくなっていた。


ふーっと緊張の糸が切れる。


"ひぁ!!"
私ははっと目を覚ました。
温かいココア缶を私の頬に押し当てて柔らかい笑顔で見ている彼がいた。
彼がコンビニに行っていた数分間、私は眠ってしまっていたようだ。
彼は意地悪そうな顔をして、
「キスしちゃえば良かった。チュー」っと言って、私にココアを手渡した。

(///〇△〇///)

「ありがとう⸝⸝⸝⸝⸝⸝」
ココアを飲んで落ち着いたのか、それとも仮眠が良かったのか脳と胸の激しい動悸が少しだけ和らいだように感じた。
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