総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅱ
「お通ししてよろしいでしょうか。」
「ん。通して。」
扉の向こうから、カツカツと硬質な足音が聞こえてくる。
迷いのない歩幅で現れたのは、一人の女性だった。
黒髪をきっちりと一つに結い上げ、背筋は定規で引いたように真っ直ぐ。
特警の紋章が入った腕章が、朝日を反射して眩しく光っている。
彼女は私たちの前で足を止めると、深く頭を下げた。
「本日より特殊警備隊より配属されました、神代雪那です。赤羽叶兎様の補佐および、朝宮胡桃様の護衛を拝命しております。よろしくお願いいたします。」
「 今日からしばらくの間、よろしく。」
「有能な上司のもとで働けるのは光栄です。」
綺麗な人…。
私は思わず見惚れてしまった。
神代さんは顔を上げると、私に視線を移した。
一瞬、値踏みするような冷静な目で見られた気がして背筋が凍ったけど、彼女はすぐに無表情に戻る。
「朝宮さん、ですね。お噂はかねがね。──私は貴方の護衛になりますので、何かあれば、遠慮なく仰ってください。」
叶兎くんの、補佐…?
私の護衛…??
急に現れた凛とした美人に、私の頭の中はハテナマークでいっぱいになる。
「え、えっと……は、初めまして。朝宮胡桃です。よろしくお願いします……」
「こちらこそ。」
淡々と頷く神代さんは、隙がなさすぎて、ちょっと緊張する。