総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅱ
「大丈夫…?」
心配で顔を覗き込むと琥珀は、にっと笑ってみせた。
いつもの、人懐っこい笑顔。
「大丈夫大丈夫。むしろスッキリした」
目の下の隈は消えていない。
それでも琥珀は銃を確認し、セーフティを外す動作を淀みなくこなした。
「へーえ、寝起きでそれ?さすがハンターってとこ?」
「天音くん、それは嫌味?」
「Bチームも同じ最終組だから、中で遭遇する可能性が高い。気を引き締めていくよ。」
叶兎くんが釘を刺すように言い、歩き出す。
一瞬だけ目が合ったけど、ほんの一秒。叶兎くんはすぐに前を見据えてしまった。
メイン会場へ移動する間も、私はどこか落ち着かない気持ちを抱えていた。
……叶兎くん、やっぱり機嫌悪い?
…でも、そういうのとはまた違うような…?
「…叶兎くん」
モヤモヤとした気持ちを抱えたままなのが耐えられなくて、私は思わず背中を呼び止めた。
足を止めないまま、低い声だけが返ってくる。
「なに?」
いつもなら、名前を呼べばちゃんとこっちを見てくれるのに。
会場入口が見えてきた。
中からは他チームの歓声と、色のついた弾丸が壁に当たる破裂音が漏れている。