総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅱ
♦︎執着。独占。秘めた本音。
【side胡桃】
ホールの喧騒を逃れるように壁際に立っていた私の目の前を、トレイを高く掲げたウェイトレスさんが通り過ぎる。
喉の渇きと、胸の奥のモヤモヤを紛らわせたくて、私は反射的にそのトレイからグラスを一つ受け取った。
てっきり、ただのぶどうジュースだと思って、一口。
「っ、これ、お酒じゃん…!」
慌てて口を離したけど、もう遅かった。
舌の上に広がる独特の渋みと、喉を焼くようなアルコールの熱。
手元のグラスを見つめると、そこには深い、血のような赤ワインが揺れていた。
本当ならすぐに返すべきなのに……なんとなく、捨てられなかった。
二口目。
……甘い。さっきより味がわかる。
喉の奥がじわっと熱くなって、なんだか冷え切っていた体の中が、少しずつ溶けていくような感覚になる。
「……もうちょっとだけ……」
自分でも、何かに投げやりになっているのは分かっていた。
三口目。四口目。
グラスが半分になる頃には、私の頬は自分でもわかるくらい熱を帯びていた。
ふらり、と足元が心許なく揺れる。
「……あつい……」
ワイングラスを持ったまま、人混みを避けるようにバルコニーへ出た。