総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅱ
例えるなら、数十人分の思考を同時に走らせているような、脳が爆発しそうな感覚だった。
かつての、まっさらな「赤羽叶兎」という意識が、どんどん薄く、遠くなっていく。
「……俺、は──」
俺は、誰だ?
その問いが喉まで出かかって……それを無理やり飲み込んだ。
……ふざけるな。俺は、赤羽叶兎だ。
体から溢れ出す力は、もはや一人の吸血鬼が持てる量を遥かに超えていた。
意識が濁り、自分が自分でなくなるような恐怖の中でも、無意識に。
「……胡桃…に、会いたい…………」
ただの、揺るがない事実を確認するような平坦な声。
心の最深部から、絞り出された本音。
「……ふうん。まだ残ってるんだ、その子のこと」
「……残ってる、じゃない。……ずっと、いる」
それだけは、真実だった。
他がどれだけ異物で塗り潰されても、胡桃のことだけは。