総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅱ
知らない能力が自分の体から溢れ出している。
しかもそれが、他の吸血鬼のものだと本能的に分かる。
自分という存在に異物が混ざっていく感触。
水に絵の具を落としたように、赤羽叶兎という輪郭がじわりと滲み始めていた。
今度は左手に、燃え盛るような炎が灯った。
氷と炎。
相反する二つの属性が、一つの体の中に共存している。
「……ぁ、は……」
次々と、自分のものではない能力が顕現していく。
どれも本来の俺には備わっていないはずのものだ。
それを「自然なもの」として受け入れてしまっている自分に気づいた時、本当の意味で背筋が凍った。
普通なら、俺はとっくに暴走しているはずだ。
体が拒絶反応を起こし、自我が崩壊して。
なのに俺は、この異常な力を飲み込んでいる。
「最高だよ、こんなの初めてだ!いつも三本で自我が飛ぶのに。……ねえ、あと何本いける?」
壊れていく自覚はあった。なのに止まらない。
暴走ではなく適応。
器が大きすぎるがゆえに、注がれたものを全部受け入れてしまう。
溢れもしなければ壊れもしない。
それがどれほど残酷で、恐ろしいことか。