総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅱ
【side琥珀】
あの不気味な地下施設から、なんとか赤羽叶兎を引っ張り出して戻ってきた。
だけど俺の役目はただあいつを救出することじゃないし、ただそのためだけに手を貸した訳でもない。
だから施設の資料室にあった紙の書類やメモリーカードは、ごっそりとカバンに詰め込んでおいた。
ハンターとして動く以上、取られた情報だけじゃなくて、使える情報は全部むしり取るのが鉄則。
それらを今、ヴァンパイアハンター本部にある研究室に持ち込んで調べている。
無機質な蛍光灯が白く照らす静かな部屋で、俺はノートPCの画面をじっと睨みつけていた。
デスクの上には、あの廃墟から持ち出した押収資料。
一緒に回収したメモリーカードにはがちがちに暗号化されたデータが詰まっていたけど、技術班に回して特急で解析を進めてもらっているところだ。
「……ふぅ」
ページをめくる手を一度止め、ぬるくなったコーヒーを口に含む。
いつもみんなの前で見せている人当たりのいい笑顔は、今の俺の顔にはひとかけらも残っていない。
「……ん?…なんだ、これ。」
めくっていた資料の手が、ピタリと止まる。
そこに挟まれていたのは、数年前に起きたある未解決事件の…確信に迫るような手がかりだった。
本部所属の名の知れた研究者二人が、不慮の事故で亡くなった時の詳細な記録と映像。
なんであの男の研究所に、こんなデータが混ざってるんだ……?