総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅱ
「もう行くの?」
私がそう言うと、叶兎くんは足を止めて振り返る。
視線が合った瞬間、
胸の奥がきゅっと縮んだ。
「……名残惜しい?」
「だって、叶兎くんとの思い出の場所だもん。White Lillyのみんなとも毎日一緒だったし…」
長いようで、短かった。
だけど間違いなく、
私の人生を根こそぎ変えることになったきっかけの場所。
「まぁ、俺も寂しくないって言ったら嘘になるけど……別にみんなと会えなくなるわけじゃないし。」
叶兎くんが一歩近づいてくる。
「それに」
叶兎は私の顎に指を添えて、ほんの少し顔を近づけた。
そして、口角を上げて笑う。
「これからは、遠慮なく触れる」
寮を出るということは、
本部で一緒に暮らすということ。
つまり本格的に同棲が始まるという現実を改めて想像して、一瞬で顔が熱くなる。
叶兎くんの唇が私の首元に近づいて、
吸われる、
と思って、思わず身構えた。
でも——何も起こらない。
……あれ。