総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅱ
彼はゆっくり息を吐いてから、ようやく言った。
「胡桃って呼んでいー?俺のことも琥珀って呼んでいいから。苗字で呼ばれんの好きじゃないんだよね。」
……距離感が、近い。
一瞬だけ戸惑いを覚えたけど…その表情には嫌な威圧感や悪意のようなものは感じられない。
グイグイ踏み込んでくる感じはあるのに、不思議と嫌な拒否感は湧いてこなかった。
「……わかりました。琥珀さん」
「さん付けもくん付けも却下」
即答だった。
じとーっと見つめられる。
「あと敬語も却下」
ぐい、と距離が詰まった気がして、思わず身を引きそうになる。
「……じゃあ、琥珀…?」
恐る恐る言うと、琥珀は満足そうに、うん、と頷いた。
そのまま向かいの席に肘をついて、私の積み上げた本へと視線を落とす。
「にしても……相変わらずエグいの読んでるね。俺もけっこー吸血鬼関連の資料読むけど、俺ですら読んだことないレベル」
そう言って、今度はじっと私へと視線を巡らせてくる。
視線が、やけに真っ直ぐで。