総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅱ
「って、凪そろそろ行かないと時間やばくない?」
「そうだな。胡桃、琥珀が変なことしたらすぐ俺らに報告してくれ」
なんて不穏な忠告を残して、二人は図書館から早足で去っていってしまった。
二人を見送ったあと、琥珀は少しだけ間を置いてから、私が高く積み上げていた本の一冊を指先でそっと引き抜く。
「これさー、ウチのゼミの教授が保管してる倉庫にもっと詳しいのあるけど。見たい?」
「えっ」
思わず声が出る。
ここにあるものよりも、詳しい資料…?
「ページが破損してたり、汚かったり、ここには置けないやつがあるんだよね」
それは、見たいかも…!
でも初対面の私になんでここまでしてくれるんだろう?
「胡桃、表情分かりやすすぎ。いいよ、でも許可は取らないとだからまた別の日に来てくれるなら、だけど」
そういって琥珀はくすっと笑った。
「連絡先だけ交換していー?」
気づけば、完全に琥珀のペースだった。
「あ、うん…!」
そのまま流されるようにスマホを取り出して連絡先を交換し、次に会う約束までトントン拍子で決まってしまう。
「じゃーまた連絡するから」
そう言って立ち上がった琥珀が私の頭に、ぽん、と軽く手を置いた。
あまりにも自然な動作で、拒否する隙すら与えられないまま。
「またね〜」
ひらひらと手を振って去っていく琥珀の背中を、私は一人見送っていた。