Bella Notte
 夏の夕日が綺麗で、そらを仰いでいると、胸の奥に暖かい、少し切ないような気持ちが広がっていってすごく、心地いい。

 楓と過ごす時間も、楓も本当に好きだって思った。
 その小さな手を思わず取って、繋いだ帰り道。

『いつも、岡山に構ってもらって……』

 鍋島の言葉が頭の中で響く。
 (アイツに楓ちゃんを渡したくない)
 そんな気持ちが初めて芽生えた。

 転機が訪れたのは、それから2年後の小学6年生の夏の終わり。

 身長が伸び始めて、楓を抜かした。それまでの自分とは全く正反対の見た目になって。

 筋肉が付き始めて来たので、運動はめきめきと上達して、元々勉強は誰にも負けたくないと努力してきたので、学年で1番。
 その上、中性的なこの顔立ちが女の子にとってとても好ましいらしく。

 一気にクラスで、いや、小学校内で一目置かれる存在になった。
 その周りの目まぐるしい変わりようにますます辟易するようになってきた頃。

「かっこいい」
「好きです」
「デートしてください」

 目の色を変えた女子が目の前に現れては、好き勝手言って近づこうとしてくる。
 中には西田と鍋島とつるんでオレをいじめていた女子も手のひら返しをして言い寄ってくるのには本当にゾッとした。

 そんな中で、楓だけが何も変わらない。

「桜井、背が伸びたから目を合わせようと思うと首が痛いんだけど」
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