Bella Notte
 ちょうど明日から3日休みだったと気付いて。

「うん、休みだけどパリ便からまだ自宅へ帰れてないから、一度帰りたいかな」
 そういうと少し困った様子で。

「楓、ごめん。しばらく自宅には帰れないかも」
 と言ってくる。

「念のためしばらくホテルへ避難してくれないかな。それと、引っ越しも考えてほしい。今回の事で迷惑かける事になって本当に申し訳ないけれど」

 赤信号で停車した車内で頭を下げてくる。
「ごめん、楓の仕事と生活に支障が出ないように、一般人だから取材NGだって弁護士を通じて交渉してもらったから大丈夫だと思うけど念のために」

 (そうだよね、桜井は有名だしこれから一緒にいるのならこういう事態もありえるんだよね)

 俯きながら考えていると、大きな手が頭を優しく撫でてくれる。
「楓が可愛すぎて、全部吹っ飛んでた。俺が悪いよな」
 そういって申し訳なさそうに微笑んで。

「でも、絶対に守るから側にいてくれないか」
 あの泣き虫で小さくて可愛かった男の子が。
 今ではこんなに逞しくなって守ると言ってくれる。

 思わず小さく吹き出してしまった。
 少しむくれた様子の桜井がこちらを見ている。

「何か、逞しくなったなって感無量で」
 そういって目じりにある涙をそっと拭う。

 終始紳士的な桜井は、手配してくれたホテルまで送ってくれた。

「せめてホテル代は払わせて」
< 137 / 198 >

この作品をシェア

pagetop