Bella Notte
 とお願いしたけれど、受け入れてもらえずに。

「いいから、色々で疲れているだろ?今夜はゆっくり休んで」
 そう言って専用エレベーター前でカードキーを差し出される。
 おずおずと受け取った後の少しの時間。

 魔法にかかったかと錯覚するほどに、目が離せない。
 今まで何度この眼差しに包まれていたのだろう。

 思えば最初から桜井は度々こんな風に見つめてきて。
 その度に落ち着かない気持ちになっていたのを思い出す。

 丁度上階へ行くエレベーターが到着したので乗り込みながら。
「ありがとう」と呟く。

「ごめん、少しだけ」
 そういって私の手首を優しく掬い取って、同じくエレベーターへ乗り込んでくるのを少し驚いた表情で見上げると。
 ドアが閉まった瞬間に、密室となった空間は体感温度が温かいを通り越す勢い。

 ふと微笑んでくれたと思ったら、大きな腕の中に優しく抱きしめられ。

「楓、もう観念して俺にしとけば」
 
 そう言って顎に手を添えられて優しく持ち上げられたと思ったら、額に柔らかなキスを落としてきた。
 顔にこれでもかと言うくらい熱が集まっていて、息が上がり始める。

 その隙に上階のボタンを押したらしくエレベーターが動き出す。

 深いため息を1つついて、桜井が離れる。
 その熱が離れると途端に寂しい気持ちになった。
 
(もう、こんなの誤魔化しきれないよ)

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