Bella Notte
 チラリとハルの方を見遣れば、大きく手を振っているのが見える。
「そのまま攫ってよ!桜井!」
 そんな言葉を叫び出す。

 その言葉に。
「言われなくても!……ハル、アリスさんおめでとう!」
 そう言って極上の笑顔で答える桜井。

 そのまま軽々とお姫様抱っこで捕獲されて、会場の外へ連れ出される。
 なすがままの状態で抵抗を忘れてしまった。

(な、何なの……)
 桜井が会場前に乗り付けていたらしい、ワンボックスカーへ有無を言わせず押し込むように乗せられて。

 抗議の声を上げるより早く。
 「佐藤さん、出して」
 運転手らしき女性へ声をかける。
 カーテンを引いてしまえばそこは2人だけの空間。

 久しぶりの桜井は、スリーピースのダークスーツを着こなしていてすごくカッコイイ。
 ネクタイをきっちり閉めた胸元をもどかしそうに緩めて。
 その仕草1つで簡単に心臓が掴まれた様に苦しくなる。
(ダメ、離れるって決めたのに)

 ふと私の視線に気づいた桜井がふっと笑って。

 「何、この前ので逃げられるとでも思った?」
(え、私たちもう会わないって話じゃなかったっけ)
 桜井からの告白を断ったというのに、まったくなかったことにされている。

 「え……ごめん、本当に意味が分からないし。今日はハルの結婚式だからお開きまでいたかったんだけど」
 そういうとさらに笑顔で。
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