Bella Notte
 ふと、視線を感じてビルへ目をやると巨大な広告写真が――――。

 優斗がこっちをみて極上の笑みをたたえている。
 
(この笑顔は表の『王子様』。優斗はこの世界で5年頑張ってきたんだよね)

 それでも今ここで隣にいない事、何気ない日常を共にできない事の寂しさを噛みしめている。

(私に大切な仕事があるように、優斗にも大切な夢や仕事がある)
 そう考えて、熱愛報道の時は距離を取ったというのに。
(いつからこんな贅沢な事考えるようになったの)

 街はホリデーシーズンで最高潮の華やぎと輝きを魅せている。
 その中にたった1人で取り残されたような気分になりながら。

(あの夜は私を変えてしまったのかな)
 とはいえ今夜は少しでも一緒に過ごせる。

 ふとショーウィンドウに飾ってある、クリアブルーの写真立てが目に入る。
(そうだ ――――)

 写真立てを購入し、ラッピングは自分でするからと包装資材を貰って。
 急いで自宅へ戻ることにした。

 リビングの机の上にあるパソコンを開いて、フォトアプリを起動する。
「あった」
 それは、故郷のあの海辺でとった写真。

 ――――「桜井、こっち。もっとくっついてよ」
 そう言って腕を強引に引っ張ると、照れた様子でぎこちない笑顔を浮かべる。

 今日は、日曜日。
 父母と一緒に大好きな海辺へやってきた。

< 171 / 198 >

この作品をシェア

pagetop