Bella Notte
  ―――― クリスマスイブの夜、仕事が押しに押してもう日付が変わろうかという時にやっと楓のマンションへ着いた。
 インターフォンを何度か鳴らすと、少し眠そうな返事が返ってきて。

 「ごめん、遅れて」
 そう言うと、ロックが解除された。
 「大丈夫だよ」の声が聞こえてくる。

 エレベーターを待っている間がすごく長く感じた。
 やっと楓の部屋のドアの前に着いて、少し呼吸を整える。

 インターフォンを鳴らそうと手を伸ばした所で、そっと部屋のドアが開かれる。
 そこには2週間ぶりの楓がいて。

 手伸ばして思い切り抱きしめる。
 「ごめん」
 そう言っても楓は笑うばかりだった。
 「大丈夫だよ、お疲れ様」
 背中でドアが閉まる音がした。

 息もつかないくらい情熱的に唇を重ねると、小さく抵抗してきた。

「ちょっと、部屋に行ってから……」
 そう抗議の視線で見上げてくるので、優しく抱きしめる。
 長いため息を1つついて解放した。

「ごめん、楓と逢えて嬉しすぎて」
 と顔を赤くしたまま呟いた。
「うん、私も嬉しいよ」
 そういって笑われると、心臓がうるさくなって思わず口元に大きな手を当てて視線を外した。

「だめ、それ以上言うと、何するか分からないから」
 その言葉に若干固まったようだった。
「とりあえず、リビングに行こう」
 と言って先に廊下を歩きだす楓の背中に呟いた。
「お邪魔します」

(あれ、そんな事言ったの初めてかもしれない)
 振り返った楓は少し不思議そうにこちらを見遣った。

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