Bella Notte
 食事中からホテルへの帰り道の間。

 ずっとスマートフォンが気になってしまった。

 寂しくないと言ったら嘘になる。
 ストラップに括ったそれを、無意識に取り上げた所で藤田が声をかけてきた。

「もしかして、桜井センパイの連絡が来ないとか?」

 その言葉に一瞬視線が泳いでしまっ

 「ううん、違うよ」
 ぎこちなく笑ったけど。
 「何やってんだよ、櫻井センパイ」
 苦々しげに呟くのが聞こえた。
 気にしないで、と庇っても。

「だったら、遠慮なくいくから」
不穏な独り言を呟き出したので、心配になって見つめていると、次の瞬間にはいつもの和かさを取り戻した。

 「そうですか……所で、新しい会社の内定は……」

 ふと笑みを漏らした後、覚悟を決めて前を見据えている瞳に何も言えなくなってしまった。

 ***

 1月1日元旦。日本。

 今日から仕事は完全オフだと社長から告げられた。
 年末に働きすぎたからと、1週間は休めと言われて。

 正直限界だったので、たくさん眠った。
 おかげで、少しだけ頭がクリアになった気がする。

(あれから楓に連絡できてなかった)

 やっと冷静に話せるような気持ちになったので、スマートフォンを手に取る。

(ハワイは今何時だっけ?)

 時計を見るとちょうど15時。
(向こうは20時か、でもまだ大晦日なんだよな)

 考え込んでいると、スマートフォンが音を鳴らす。
 『桜井センパイ、お久しぶりです。藤田です』

 意外な人物からのメッセージだった。
 『楓先輩が、仕事を辞めるって知ってますか?』
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