Bella Notte
 「あのキスで桜井……ううん、優斗への気持ちに気づけたんだ」
 そう言って柔らかく笑うと、藤ちゃんは少し驚いた様子。

 「じゃあ、桜井センパイとお付き合いする事になったんですね」
 幾分かほっとした表情を浮かべていている。

 「だから、ありがとう。藤ちゃん」
 そう言うと、少しだけ傷ついたような表情を浮かべた。
 「そうですか……」
 藤田はアイスティーのグラスの水滴を指でそっとなぞりながら。
 何かを振り切った様に笑った。

 ベストタイミングで注文したエッグス・ベネディクトが目の前に運ばれてきた。
 「美味しそうですね」

 彼の声は、明るいのに微かに震えている。

 「藤ちゃん……」
 
 そっと声をかけると、手が止まり、少しだけ目を伏せた。
 
 「大丈夫です。ちゃんとわかってますから。先輩が幸せなら、それでいいって……そう思えるようになりたいです」

彼の情熱を思うと、少しだけ胸が痛む。
それは、身を焦がす恋ではなく、静かな親愛の情とも言える。

「そう言ってくれて、嬉しいよ。藤ちゃん、ありがとう」

静かに頷いた彼が少しだけ笑って言う。

「……やっぱり優しいですね。あんなに強引に奪ったのに。でもそんな先輩だから好きになったんだと思います」

 波の音が、遠くで穏やかに響いていた。

「いえ、忘れてください」

そう言った藤ちゃんの笑顔は、さっきより清々しかった。

 
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