Bella Notte
 重いだろうし遠回りになるからと途中で下ろしてくれと頼んでも、井川君は折れない。

「全然軽いし、大丈夫。女の子1人で危ないし、送らせてよ。」

 笑って言ってくれた。
 言葉通りに自宅まで送ってくれて。

 本当に井川くんは素敵な男の子だと自分の部屋のベッドの上で、1人ニヤけながら眠りへと落ちていく。

 夢を見た。
 井川くんが増田さんと付き合ってる夢。

 ベッドの上で静かに目が覚めたとき、何だかこの恋は実りそうもないといつにも増して弱気になった。
 夏祭りから一週間後、終業式を無事迎え、明日から夏休み。

 井川君とは良い友達になれた。……はず。

「あっ、岡山さーん。」

 ほら、こうやってグラウンド近くの渡り廊下を歩いていると。
 青空顔負けの爽やかな声と笑顔で手を振ってくれる。

 もう、胸が苦しいくらい高鳴って。
 やっと笑顔を作って手を振り返して。

「井川くん、頑張って。」

 何故か何も言えない私に変わって、隣に偶然居合わせた桜井が耳につく裏声で叫ぶ。

 そうすると、井川君がお腹を抱えて笑ってくれて。
 私は益々赤面する。

 と、ここまではいつも通りだったのだけれど。
 井川君がこちらに向かって走って来てくれた。

「ねぇ、夏休みって忙しい?」

 その上わざわざ予定の確認をしてくれて。

「ううん。全然。」

 って思わず瞳を輝かせて首を振る。
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