Bella Notte
 もう、足の指の間が擦れていて痛すぎる。
 思い切って裸足になろうと下駄を脱ぎ覚悟を決めた。

「はい、乗って」

 井川君が私の前にしゃがむ。

「痛いの我慢したら、もっと酷くなるよ。遠慮しないで、ほら。」

 井川君は少し振り向いて、とても優しい笑顔で促してくれる。
 私らしく今日を楽しむ。ハルの言葉が私の背中を押してくれる。

「あいにく絆創膏が手元にないし、薬局も近くに無いから嫌じゃなかったら。」

 なんて言われたら、もう断る選択肢はどこかへ吹っ飛んだ。

「ありがとう、井川君。実は凄く痛かったんだ。」

 嬉しさを噛みしめながら、そう言って素直に背中に乗る。
 凄く広くて暖かい背中。

 脱ぎ捨てた下駄まで井川君は器用に持ってくれてる。

「岡山さんって、我慢強いんだ。」

 優しい声で笑う彼。声が直接体に響いて、凄く近くに感じる。

 私の高鳴る心臓の音がばれませんように。

「うーん確かに、友達にはそう言われる事が多いかも。」

 心臓が壊れるんじゃ無いかってくらい高鳴り続けていて、このまま天に召されないかと本気で心配になる。

「でも我慢のしすぎは、辛いよね。今日だってこんなになるまで黙ってるし。」

 そう言って苦笑する井川君はすごく優しい。
 このまま時が止まればいいのに。

 本気でそう思った。

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