Bella Notte

 ―――― 楓が泣いてる。

 その表情があまりにも悲しげで、流す涙がとても綺麗で。
 その涙と心に近づいてみたいと、いつもより少し素直になれた。

 どれだけ言葉で語りかけても反応がない事に少し腹立ち落ち込みもした。

 そんなに井川が好きなのか、と。

 頭を撫でるのが友人として精一杯の慰めかと勇気を振り絞りその綺麗な髪へと初めて手を伸ばした。
 嫌がる事もなく、なすがままの楓。

 静かに泣く楓を目の前にしたら堪らなくなって腕の中に抱きしめた。
 そうして。

『オレじゃだめか?』

 って言葉にしてしまいそうになって慌てた。
 適当に理由をつけてしばらく楓を腕の中に閉じ込めた。

 楓は震えていて、怖がらせてしまったかと焦ったけれど。
 涙が止まった楓は、オレの側から離れて大丈夫だと強がって見せた。

 廃材置き場からの帰り道、泣きそうな空から雨が降り出して。

 少し頭が冷えたオレは、いつもの悪友に戻る。

 そうだ、オレの立ち位置を忘れるな。
 それが今の楓には1番いい。

 この気持ちは、このままで。
 気付かれることがあってはならない。

 そうしていなければ、きっともう側にはいられないから。
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