Bella Notte
 真剣な顔でそう言うのが少しだけ気の毒に思えた。

「あ、この前の女優さんとか?」

 とまだ燻っているゴシップネタでからかってみる。

「楓は?相変わらず空の上か?」

 気にする素振りもなく屈託のない笑顔で聞いてくる。
 桜井のスルースキルが上がってる。

「うん、相変わらず。でも夢だったCAになれたし大変だけど充実してる」

 自然と笑みが深まる。
 ずっとCAを目指して努力を重ねてきた。
 見た目に気を使い、メイクだって研究を重ねてきた。

 それは、当たり前の事だし夢をかなえるためには何をするべきか真剣に考えた。

「お前、相変わらず面白い奴だよな」

 そう言われても何のことか分からない。
 その視線の先をみると、頬を染めた男の人たちがこちらを見て微笑んでくれる。
 
 いつもそうだ、彼らは桜井といるとああやって遠巻きにして近づいてこない。
 その代わり、1人でいると囲まれることはしょっちゅうだ。


「それよりさっきから桜井ファンの方々の視線が痛いんだけど」

 男性たちの少し隣の新婦友人らしき一団が、無遠慮にこちらに視線を投げかけてくる。
 新婦友人の皆さんは、私達の1つ下の後輩が多いようだ。

 知ってる顔ぶれもチラホラ見える。

「懐かしいな」

 そう呟きながら、そちらへ顔を向け、表の爽やかスマイルで手を上げて挨拶する。

 とたんにキャーっと悲鳴の様な歓声が上がる。

「桜井、何か昔よりバージョンアップしてない?」

 棒読みで称賛する。

「だろ?」と不敵に笑われた。


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