Bella Notte
 震える程、恥ずかしかった。
 腕の中でひとしきり泣いたら少しだけスッキリしたのも事実だ。

 そこまで思い出して次の瞬間に、文乃へ余計な事を言ってしまったと気づく。

 少し驚いたような文乃の瞳がすぐに何かに気づいた様に細められた。

「もしかして、後ろで心配そうにこっち見てる桜井(アイツ)と何かあった?」

 私達から少し離れた後ろに、友達数人と帰宅中の桜井がいる。
 何となくさっきの出来事が言いづらくて、黙って俯いてしまう。

「いいよ。楓が教えてくれないなら、奴に聞いてくる」

 と言って本気で聞こうと立ち止まる。
 慌ててかいつまんで話すことにした。
 話している間中、恥ずかしくて顔から火が出るかと思った。

「何か面倒くさい事になってんね。拗らせてるのは1人だけじゃないみたいだし」

 文乃が1人ぶつぶつと言ってる。
 こころの機敏に敏感で聡明な彼女は人の考えや気持ちが手にとる様に分かるらしく。

 見つめられるだけで、心の奥まで覗かれてる気分になる。
 文乃にだけは、隠し事はしたくないし、できないと思ってる。

「でも、楓を元気にしてくれるなら、例え悪友でもいいじゃない」

 ってすごく素敵な笑顔で納得された。

 いつも、意地悪してくる奴。
 ハルと色々あってきっと、振られた者同士分かる事もあったのかな。

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