Bella Notte
 美しい顔に柔らかな愛しい人に向けるような極上の笑みをたたえる奴。

 何故だか桜井が知らない人の様に思えた。
 いつもみたいに応酬する気になれない。

 俯いてさっきの言葉をかみしめる。
 いつまでも側で。

 いつかは、桜井とも会えなくなる日が来るのだと、そんな当たり前の事実に今更気づいた。
 感傷的になるのは、歳を重ねてきたせいだろうか。

 もうあの頃の青いとても青い、青春時代とは違う。
 私は吹っ切れた幸せな気分から一転、また切ない気持ちへと囚われはじめる。

 初めて感じるこの気持ちは一体何なのだろう。

 胸が締め付けられて切ないのに、泣きたくなるほどなのに、桜井の顔を見ると嬉しくて。

 今よりももっと。色んな桜井の側にいたいと思ってしまう。
 私に背を向け友達の元に戻る桜井を見送りながらその背を追いかけたくなる衝動。

 ただ戸惑っていた。








































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