Bella Notte
 そんな事を何度か繰り返しているうちに、入口付近で黄色い歓声が上がって、新郎新婦が到着かな、と振り返った。

「……桜井」

 心臓が高鳴って、顔が熱く感じる。
 目が合う前にそそくさと人混みに紛れて、存在を消そうと努力した。

 相変わらず、男の人達に囲まれ続けてしまう。

「お一人ですか」
 そのうち声をかけてくる人が増えて来た。

 視界の端に、桜井が入り込んだけど、さっきの披露宴後よりかなり囲まれてて動きが取れないみたいだ。
 こちらにはやってこれないだろうと少しだけホッとした。

「すみません、友人を探しているんです」

 とか何とか言って、笑顔で人混みをすり抜ける。

 それでも「それなら、一緒に探しますよ」とか。
 「お友達も一緒に」とか。

 ありふれた言葉で引き留められるけど、もう、こんな状況は正直めんどくさくなってきた。

「失礼します」

 営業スマイルを浮かべてなぎ倒す勢いで進む。
 なぜいつも男の人たちは、私にかまうのだろう。
 この会場には、他にも魅力的な人たちはたくさんいるのに。

 本気で聞きたい気がするけれど、そのやりとりも相手に失礼な気がして。

 そうすると。

「楓さん?」
 ふと、聞いた事のある声に呼び止められる。

 肩に手をかけられて、思わず振り向けば披露宴で声をかけてもらった秋口さんがいる。
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