Bella Notte
 と聞いても、それは桜井に聞いた方がいいと教えてくれなくて。

「全部取っ払って素直になれば、もう答えは出てるはずだけれど」
 そう微笑みながら、帰り支度を始める文乃。

「ま、頑張って。私はそろそろ実家に帰らないと、電話がすごいのよ」
 そう言ってスマホの画面を見せてもらったら、絶え間なく電話がかかってくる。

「文乃、大丈夫?私も一緒に実家に行こうか?」
 そう言っても困ったように首を振るばかりで。
「大丈夫、また来月会おう」
 そういって、見送りは良いからと言いながら帰っていった。

 とりあえず健人君の淹れてくれた紅茶を飲み干した。
 仏壇の父母に朝の挨拶をする。
「おはよう」
 何だか少し恥ずかしいような気もする。

「お父さんもお母さんも、桜井の事大好きだったよね」
 小学生の頃、父があの海辺で私と一緒に遊ぶ桜井を捕まえた。
『楓の事を頼んだぞ』
 とか冗談交じりに言ってたっけ。

 振替した飛行機はとっくに出発してしまったので、新たに飛行機の予約をしようとスマートフォンの画面をタップした所で、指先が止まる。

(そう言えば、帰りは一緒にって桜井と約束してたっけ)
 よく考えたら世間に注目されているのに、やっぱり一緒になんて無謀だと考えて。

 文乃は長期休暇でしばらくこっちに滞在すると言っていたし。

 意を決して。
< 94 / 196 >

この作品をシェア

pagetop