疎まれ令嬢の一途な政略婚
三章
「あら、ずいぶん遅かったじゃないの? 見合い相手は成金の中年男らしいけど、アンタみたいな子には勿体ないくらいよね」

 裏口から入ったのに、まるで待ち構えていたかのように兄嫁である美弥(みや)さんから声をかけられた。私が彼女を『お義姉さん』と呼ぶと、もの凄く怒られるので必ず名前で呼ぶようにしている。

 今日あった私の見合い話を兄から聞いたのだと思うけれど、相手が成金の中年男性っていうのはいったい……?
 話した時に瀬戸口(せとぐち)さんの年齢は三十一歳だと聞いたが、彼はそれよりもずっと若く見える。誠実そうな雰囲気で、なにより女性に凄くモテそうな容姿をしていたのだから。
 でも私の兄は学生の頃から美弥さんにべた惚れで、そんなすぐにバレるような嘘をこの人に話すとは思えない。

 それなら、どうして?

 しかし余計な事を話せば、後で兄からどんな叱責を受けるかもわからないので黙っておくことにした。
 するとそんな私の反応に気を良くしたのか、兄嫁は隣で座っていた彼女の娘に嬉しそうに話す。

「良かったわよね、心寧(ここね)。やっとこの邪魔なお姉ちゃんが、このお家からいなくなるのよ?」
「ふうん……そうなの」

 姪の心寧ちゃんは、どうでも良さげな返事をしただけで。私がこの家にいようがいなかろうが、そんな事は興味も無いのでしょうね。 
 私を小馬鹿にして気が済んだのか、美弥さんは心寧ちゃんを連れてさっさと自分達の部屋に戻っていく。二人の姿が見えなくなってからやっと、私は靴を脱いで家の中に入ることが出来たのだった。
< 10 / 10 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

夫婦間不純ルール

総文字数/90,253

恋愛(その他)144ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
「夫婦間でルールを決めないか?」  夫のこの言葉が、私の心の何かを揺らし壊してしまうなんて……  彼は分かっていたのだろうか? それとも、もしかして夫には既に……?  さまよう心と流されそうになる身体。  誰より愛しているのは夫のはずなのに、今の私の傍にいるのは彼じゃ……ない。 ※リハビリ作品のため、ゆっくりになります。 ※表紙作成 表紙メーカー
表紙を見る 表紙を閉じる
 ※現在ファン様限定 「そこから降りて来い! 俺ならお前がまだ知らない事も全て教えてやれる」  私になんて構わないで。   「お荷物」「恥晒し」  それがこの家での私の呼ばれ方、貴方が思うような深窓のお嬢様なんかじゃないのよ。   「俺はどんな手を使っても、お前をそこから出してやる」  そんな事、出来る訳ないの。簡単に言わないで……  そう思っていたのに―――― 「契約結婚……俺としてくれますよね?」  ……そう言って優雅に微笑んで見せる。ねえ、貴方はいったい何者なの?  新河  櫂  180㎝ 31歳    二階堂 千夏 163㎝ 24歳 表紙イラスト 魁 ゆき様
セカンドマリッジリング ―After story—

総文字数/73,402

恋愛(純愛)111ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
セカンドマリッジリング ※こちらの作品のその後のお話となります。  五年間の契約結婚を終え離婚寸前だった花那と颯真。  そんな二人もやっと自分の気持ちを伝え、想い合うことが出来た。  新しくやり直すはずの結婚生活、そこに一本の電話が。  予想もしなかった出来事が起こり、その渦の中へと二人は巻き込まれていく。  颯真との関係は良好なのに、周りはそれを認めてくれず花那は少しずつ二人の結婚生活に迷いを感じるようになる。  必ず花那を守ると決めた颯真も少しずつ追い詰められていく。  そんな二人が選ぶ未来は――? 2022/02/22

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop