疎まれ令嬢の一途な政略婚
三章
「あら、ずいぶん遅かったじゃないの? 見合い相手は成金の中年男らしいけど、アンタみたいな子には勿体ないくらいよね」

 裏口から入ったのに、まるで待ち構えていたかのように兄嫁である美弥(みや)さんから声をかけられた。私が彼女を『お義姉さん』と呼ぶと、もの凄く怒られるので必ず名前で呼ぶようにしている。

 今日あった私の見合い話を兄から聞いたのだと思うけれど、相手が成金の中年男性っていうのはいったい……?
 話した時に瀬戸口(せとぐち)さんの年齢は三十一歳だと聞いたが、彼はそれよりもずっと若く見える。誠実そうな雰囲気で、なにより女性に凄くモテそうな容姿をしていたのだから。
 でも私の兄は学生の頃から美弥さんにべた惚れで、そんなすぐにバレるような嘘をこの人に話すとは思えない。

 それなら、どうして?

 しかし余計な事を話せば、後で兄からどんな叱責を受けるかもわからないので黙っておくことにした。
 するとそんな私の反応に気を良くしたのか、兄嫁は隣で座っていた彼女の娘に嬉しそうに話す。

「良かったわよね、心寧(ここね)。やっとこの邪魔なお姉ちゃんが、このお家からいなくなるのよ?」
「ふうん……そうなの」

 姪の心寧ちゃんは、どうでも良さげな返事をしただけで。私がこの家にいようがいなかろうが、そんな事は興味も無いのでしょうね。 
 私を小馬鹿にして気が済んだのか、美弥さんは心寧ちゃんを連れてさっさと自分達の部屋に戻っていく。二人の姿が見えなくなってからやっと、私は靴を脱いで家の中に入ることが出来たのだった。
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