疎まれ令嬢の一途な政略婚
妖精、とは? それが自分の事なのかピンと来なくて、男性の笑顔に釣られてニコニコと笑っていたのだけど。隣に立っている瀬戸口さんは、なぜか慌てた様子で彼を奥へと追いやろうとする。
「ちょっと、真壁オーナー! そうやって油ばかり売ってないで、早くキッチンに戻ったらどうです?」
「はいはい、どうぞゆっくりしていってくださいね~」
真壁オーナーと呼ばれた男性は、そう言って厨房と思われる場所へと行ってしまった。話が面白そうだったので、もう少し聞きたかったけど残念。
私とは真逆で、何故か瀬戸口さんは少しホッとして表情を浮かべてる。
「まったく、あの人は余計な事ばかり……」
「ふふ、とても楽しいオーナーさんですね。せっかくなので、もう少しお話したいくらいでした」
私がそう返すと、どうしてか瀬戸口さんが微妙な表情をみせて。何か彼にとって都合の悪い事があるのだろうか? こんな顔を見せられると、少し気になってしまう。
「俺はもう充分です、どうせ伊千夜さんに言わなくていい事ばかり話すんでしょうから」
「そうなんですか?」
私には言わなくていい事って? 隠されると余計に気になるのに、それを聞く勇気が出ないのが自分のダメなところ。でもそんな私に、瀬戸口さんは……
「恰好悪いところなんて知られたくないじゃないですか、未来の奥さんには。そういう事ですよ」