疎まれ令嬢の一途な政略婚

「……えっと、はい」

 さすがにこれ以上は聞いてはいけない気がする。というか、私がどんな顔をしていいのか分からなくなりそうで。どうしてこんなにも瀬戸口(せとぐち)さんは、私の胸がむずむずするような事ばかりを言うのだろう?
 私のような疎まれている人間に、何故こうも優しくしてくれるの?

「そろそろ座りましょうか、あの席が良いと思いますよ」

 店の奥の方にある広めのテーブルへと、瀬戸口さんの後ろをついていく。
 その席の近くの棚にはたくさんの多肉植物の鉢があり、それだけでも見ていて楽しい。本当に緑が綺麗で、差し込む日の光が暖かい素敵な場所だと思う。

「伊千夜(いちよ)さんは、本当に植物がお好きなんですね」
「はい、実はそうなんです。古城(ふるしろ)の屋敷にも大きな中庭があるのですが、私もそこの手入れを手伝わせてもらってるくらいで……」

 兄の浩晴(ひろはる)と兄嫁の美弥(みや)さんは、まず滅多なことでは中庭には来たりしない。だからこそ庭師の方と仲良くなり、一緒に作業をさせてもらえるのだけど。
 それでも私には、仕事が休みの日の楽しみの一つだから。

「中庭の手入れをですか? ああ、だから……いえ、何でもありません」

 少し驚いた後で、瀬戸口さんは何かを言いかけて止めてしまう。でも私はその内容を何となく気付いてしまって、彼に対して申し訳に気持ちになる。
 これは……私が古城の家に相応しい娘ではない証拠のようなものだから。

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