疎まれ令嬢の一途な政略婚
「……本当だ。この前の料理も美味しかったけど、今日のはそれ以上かも」
瀬戸口さんもこの料理の美味しさに驚いているようで。そんな彼の言葉に真壁さんは優しい笑みを浮かべている、この落ち着いた雰囲気がとても心地良い。
「ありがとうございます、後でデザートもお持ちしますね」
真壁さんはそう言って、また奥のキッチンへと向かって歩いていく。その姿が見えなくなってから、小さな声で瀬戸口さんに気になっていたことを尋ねてみる。
オーナーに揶揄われると教えてくれなくなりそうなので、聞こえないようにこっそりと。
「それにしても、私のイメージって……瀬戸口さんはいったいどんな風に話されたんですか? 自分らしいところがどこなのか、全然分からなくて」
「そうですか? 俺としては、伊千夜さんの雰囲気そのままだと思ったんですが」
瀬戸口さんはそう言うけれど、やっぱり自分では分からないものなのかもしれない。自分が思っているイメージと、周りが感じるのそれは意外と違うのだろう。
それでも瀬戸口さんが私を見て、そう思ってくれている事は正直なところ嬉しくて。この人と一緒にいられれば、自分が伊千夜という一人の人間として生きれる気がする。
「今日、ここに来れて良かった。本当にありがとうございます」
素直な気持ちでお礼を言った私に、瀬戸口さんは少し驚いた顔をして……少し迷った素振りを見せてから、丁寧にこれからの事を話し始めた。


