13年後に再会した幼馴染と愛され生活始めます。
 車に乗り込むと、美澪が泣き止んだのを確認して、不意打ちで眦にキスをした。

「帰ったら目を冷やそう」
「ありがとう……」
 このまま蒼士のマンションに泊まる……ってことだよね……。泣き止むと同時に緊張してしまう。

 返事はしていなかったが、美澪としてもまだ蒼士と離れたくなかった。
 今、一人になれば、寂しさに押し潰されそうだ。
 車でも蒼士と美澪は手を離さないでいた。どちらからそうしたわけでもなく、自然と繋がれた手をそのままにしておきたかった。
 移動中は、どちらも喋らなかった。美澪が落ち着けるようにと、気を遣ってくれたのだろう。

 マンションは病院から程近い場所にあり、立地も良かった。
「ここの最上階だから」
 美澪の荷物を持ち、部屋へと案内される。
 エレベーターの中でも蒼士は美澪の肩を抱き寄せ、離れなかった。
 もう、友達とは思えない。蒼士を完全に一人の男性として見てしまっている自分がいた。

 それなら、もっと誇れる自分になっていたかった。
 蒼士は医師になる夢を叶えて活躍している。いずれは海堂総合病院のトップに立つ。なのに美澪は社会の底辺でもがいて苦しんで、それでも誰かの役に立ててるわけでもない。何一つ誇れるものがない現実が情けなくて悔しくもある。
 恋愛に溺れ、流されてしまったのを後悔しても遅いのも分かっているが、これからの人生でどこまで自分を取り戻せるのか不安が募る。
 
 蒼士と再会できて嬉しい反面、自分を卑下してしまう気持ちを捨て切れないでいた。
 美澪の全てを知っても、それでも甘えてくれと言ってくれた。せめてそれが慈悲ではないと信じたい。

「広くて、綺麗だね」
 蒼士の部屋は広い廊下の先にあるリビングまでの間にいくつもドアがある。
 そして、南に面した一面はガラス張りになっていて、街の景色がイルミネーションのように輝いていた。
 生活の差を感じてしまう。
 美澪は八畳の1Kのアパート。ここはとても同級生が住んでいるとは思えない空間だった。
「物を置いてないだけだ。病院でいる時間の方が長いから」
「私だってそうだけど、でもここの半分……四分の一もない狭いアパートだよ。蒼ちゃんが見れば、人が住んでるとは思えないかも」
「美澪はまたそうやって自分を責める。もうこれからは、美澪を否定する言葉は禁止。そうしないと、今まで頑張ってきた美澪に失礼だからな」
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