13年後に再会した幼馴染と愛され生活始めます。
「私、幸せになってもいいのかな」
「まぁな。俺と再会しちゃったし。その運命からは逃れられないだろうな」
「なに、それ……」
「家政婦と恋人、どっちがいい?」
「恋人がいい。同じ時間を過ごすなら、私は蒼ちゃんの恋人になりたい」
「今日は美澪を泣かせてばかりだな」

 涙が流れる頬に口付けられる。
 その後、顔中にキスを落とされて、くすぐったくて泣きながら笑った。
 冷めてしまった紅茶で新たなスタートに乾杯をし、照れ臭くてお互い笑って誤魔化した。
 
 寝室へ移動し、並んで横になる。
 目が冴えてまだ寝付けそうにない。
 蒼士は美澪に作って欲しいメニューを並べていく。
 それはどれも子供の頃、美澪の家で一緒に食べたものばかりだった。

「母の料理も食べたことはあるが、覚えていないんだ。美澪と一緒に食べる時の方が美味しかったし、楽しかった。だから、子供の頃を思い出す時はいつだって美澪の食卓なんだ」
 美澪にとっては何気ない日常の一コマが、蒼士には大切な思い出として刻まれている。
 誰かを料理で喜ばせたいと思っていた美澪は、すでに夢を叶えていたと知った。

「私、また料理始める。蒼ちゃんのためだけに作りたい」
「それは楽しみだ」
 蒼士の言葉が少なくなってくる。
 もう、眠る時が来た。
 意識を手放しそうになって尚、蒼士は美澪を抱き寄せた。
 
 蒼士に借りたTシャツは美澪にはサイズが大き過ぎて服の中で体が泳いでいる。
 見た目よりも美澪が華奢で、「細いな」と呟いて蒼士が寝落ちた。
「君は逞しくなったよね」
 寝顔に話しかけ、しばらく長いまつ毛を眺めて過ごす。

 蒼士と再会するために過労で倒れたのなら、僥倖でしかないとさえ思う。
 娘の沙莉を忘れたわけではない。けれど一つ、考え方を改めた。
 今までは沙莉のために無理をしてきたけれど、これからは沙莉のために元気になろうと決めた。
 もしも未来で沙莉とも再会を果たした時、疲れ果てた姿を見せたくない。
 昔、蒼士の母を見て綺麗なお母さんが羨ましいと思っていた。自分もそんなふうに思ってもらえる人になりたい。
 だから、ちゃんと健康になろうと、決意を固める。

 美澪も目を閉じる。
 目が覚めたら、その一歩を踏み出すのだ。
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