13年後に再会した幼馴染と愛され生活始めます。
 同じ課の人たちはまだ何も知らない。
 きっと、課長に何らかの罰が成された時は驚くだろう。その反応を美澪は見られないが、せめて先に地獄から逃げる自分が、みんなのために何か出来るなら……。
 そんな風に考える。
 もっと働きやすい職場になりますようにと心で願った。

 蒼士はものの三十分ほどで戻ってきた。
「美澪の辞表は受理された。そして課長は近々解雇が言い渡されるだろう」
「……本当……ですか」
 賢吾が驚嘆の声を上げる。
「発表になるまでは内密にな」
「はい! ありがとうございます!! 海堂先生!!」

 賢吾と並んで深々とお辞儀をした。
「俺、午後の会議が始まるまでに、もう一度課長に取り合ってみる。美澪は、本当におめでとう。幸せになれよ」
「うん……賢吾も今まで色々ありがとう」
「それはお互い様だから」
 じゃあ、というと賢吾は行ってしまった。

 その背中は活き活きとしていた。きっと彼なら大丈夫だと安心できる。

 美澪はというと、あまりにもアッサリと受理されたものだから肩透かしを食らってしまった。
「ほら、美澪もデスクの片付け早く終わらせてこい。昼休みが終わるまでにな」
「そうだね。そんなに荷物はないから。ここで少し待ってて」
 急いで自分のデスクへと向かう。
 昼休みでも数人の社員はパソコンに向かっている。チラリとこちらに向かう視線を感じたが、気付かないふりをして黙々と片付けた。
 書類などは段ボールにまとめておき、私物だけを持参した紙袋に入れていく。
 ゴミをまとめて出しておき、賢吾とこっそりと手を振りあうと蒼士の許に戻った。

「早かったな」
「うん、荷物はこれだけだった」
 文房具類が必要最低限とノートパソコンだけが入った紙袋を蒼士が受け取る。

「帰ろうか」
 一時間も経たないうちに、会社から出た。
 胃痛はいつの間にか治っていた。
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