13年後に再会した幼馴染と愛され生活始めます。
そして翌週、久しぶりに地元へと帰った。
新幹線で二時間程度で行けるのに、帰省を避けていた。
「懐かしいな。もっと変わってると思ってたけど、むしろあの頃のままのように見えるね」
「俺は殆ど思い出せない。こんな街だったのか」
狭い世界で生きてきたんだなと感慨深く呟いた。
最寄りの駅から美澪の実家まで歩いて移動する。
知っている人に会うかもしれないと思いつつ、大人になった同級生を見てもお互い気付かないだろうとも思った。
特に蒼士をあの『森下蒼士』だと気付く人は一人もいない気がする。
それは美澪の母も然り……。
「本当に、あの蒼士くんなの?」
目を丸くして固まってしまった。
母の気持ちは美澪も笑えるほど共感できる。あんなに親しくしていた美澪本人でさえ気付かなかったのだから。
祖母は他界していて、蒼士はそれをとても悔やんでくれた。
「俺を育ててくれたのは、美澪とおばあちゃんです」
「きっと、おばあちゃんにも蒼士くんの声は届いているわ。天国で今頃大喜びしているでしょうね」
美澪の両親も、突然の入籍の報告に驚きながらも喜んでくれた。
「もう、恋愛もしないのかもしれないって心配だったの。蒼士くん、どうもありがとう。美澪をよろしくね」
母の隣で、口数の少ない父がバレないように涙を拭っていたのを美澪は見逃さなかった。
今度こそ、絶対に両親を安心させられるような結婚生活を送ろうと誓った。
「一泊くらい泊まっていけば良いのに」と母は言ってくれたが、蒼士はどうしても外せない仕事があると前々から言っていたので、改めて入籍した後で挨拶に伺うと伝え、マンションに帰った。
「緊張してたけど、終わってみればあっという間だったね。でも、蒼士のお母さんも海堂先生も歓迎してくれて安心した」
「入籍の日程を俺の独断で決めて良かったのか?」
「うん、私はいつでも。っていうか、そろそろ働きたいって思えてきたし、早い方がいいのかなって」
「無理してない?」
「してない、してない。落ち着いた生活が送れるようになって、自分と向き合う時間もできて、家庭内に収まるよりも、やっぱり少しくらいは社会に出ていたいなって思ったんだ」
「じゃあ、予定通り進めるよう尽力する」
「蒼士こそ、無理して倒れないでね」
三ヶ月なんてあっという間だ。
料理をする感覚は完全に元に戻ったし、蒼士の誕生日にはいろんな和食で振る舞おうとメニューもこっそり考えている。
仕事をしたいと思えたのは、気に入ったカフェを見つけたからだった。こんな店で働きたい。自然とそんなふうに思い、実はオーナーと話を進めていた。
そうして迎えた蒼士の誕生日。
蒼士が仕事に行っている間に買い出しから仕込みを進めていく。
途中、用事を済ませてケーキを買いに行き、ホールではなくショートケーキを買った。
和食にも合うシャンパンも調べて調達しておいた。
今日は緊急の患者が運ばれて来ない限りは定時で上がれるだろう。
時間を逆算して料理を仕上げ、テーブルコーディネートも頑張った。
二人で過ごす最初で最後の誕生日。
プレゼントは、きっと蒼士があっと驚くだろう。
「蒼士、改めて、誕生日おめでとう」
帰ってきた蒼士を迎え入れる。
「懐かしい匂いがする」
「おばあちゃんとよく作ってたメニューにしたんだ。直ぐに乾杯できる?」
「腹ペコだ。直ぐに着替えてくる」
美澪の額にキスを落とし、着替えに行っている間に全ての料理を盛り付けた。
誕生日っぽいかと言われると、純和風の料理は違うかもしれないが、二人にとっては思い出の食事。
だし巻き卵も、あの頃より幾分も上達している。
「あのね、プレゼントなんだけど」
ご飯を食べ終わった後で切り出す。
蒼士は「気遣わなくていいと言ったのに」と言ったが、そうではないと美澪は言った。
「プレゼント……っていうか、報告があるんだ」
今日、貰ってきたばかりの母子手帳を差し出す。蒼士は瞠目とし、手帳と美澪を交互に見詰めた。
「美澪……これは……」
「赤ちゃん。いるって。少し前に分かってたんだけどね。今日言いたくて。昼間に手帳もらいに行ってたんだ」
喜んでくれるか不安もあった。けれど美澪は、初めて蒼士の眸に涙を見た。
「美澪……ありがとう……体、一層大事にしてくれ」
「来年は、家族でお祝いしようね」
「今から楽しみだ」
「明日は、いよいよ入籍だね」
「美澪と家族になれるだけでも嬉しいのに、更に幸せを連れてきてくれるなんて」
蒼士はシャンパンくらいでは酔わない。
けれど酔っているのかと思うほど、今夜は泣き上戸だ。
美澪ももらい泣きをして、新しい命を一緒に歓迎した。
新幹線で二時間程度で行けるのに、帰省を避けていた。
「懐かしいな。もっと変わってると思ってたけど、むしろあの頃のままのように見えるね」
「俺は殆ど思い出せない。こんな街だったのか」
狭い世界で生きてきたんだなと感慨深く呟いた。
最寄りの駅から美澪の実家まで歩いて移動する。
知っている人に会うかもしれないと思いつつ、大人になった同級生を見てもお互い気付かないだろうとも思った。
特に蒼士をあの『森下蒼士』だと気付く人は一人もいない気がする。
それは美澪の母も然り……。
「本当に、あの蒼士くんなの?」
目を丸くして固まってしまった。
母の気持ちは美澪も笑えるほど共感できる。あんなに親しくしていた美澪本人でさえ気付かなかったのだから。
祖母は他界していて、蒼士はそれをとても悔やんでくれた。
「俺を育ててくれたのは、美澪とおばあちゃんです」
「きっと、おばあちゃんにも蒼士くんの声は届いているわ。天国で今頃大喜びしているでしょうね」
美澪の両親も、突然の入籍の報告に驚きながらも喜んでくれた。
「もう、恋愛もしないのかもしれないって心配だったの。蒼士くん、どうもありがとう。美澪をよろしくね」
母の隣で、口数の少ない父がバレないように涙を拭っていたのを美澪は見逃さなかった。
今度こそ、絶対に両親を安心させられるような結婚生活を送ろうと誓った。
「一泊くらい泊まっていけば良いのに」と母は言ってくれたが、蒼士はどうしても外せない仕事があると前々から言っていたので、改めて入籍した後で挨拶に伺うと伝え、マンションに帰った。
「緊張してたけど、終わってみればあっという間だったね。でも、蒼士のお母さんも海堂先生も歓迎してくれて安心した」
「入籍の日程を俺の独断で決めて良かったのか?」
「うん、私はいつでも。っていうか、そろそろ働きたいって思えてきたし、早い方がいいのかなって」
「無理してない?」
「してない、してない。落ち着いた生活が送れるようになって、自分と向き合う時間もできて、家庭内に収まるよりも、やっぱり少しくらいは社会に出ていたいなって思ったんだ」
「じゃあ、予定通り進めるよう尽力する」
「蒼士こそ、無理して倒れないでね」
三ヶ月なんてあっという間だ。
料理をする感覚は完全に元に戻ったし、蒼士の誕生日にはいろんな和食で振る舞おうとメニューもこっそり考えている。
仕事をしたいと思えたのは、気に入ったカフェを見つけたからだった。こんな店で働きたい。自然とそんなふうに思い、実はオーナーと話を進めていた。
そうして迎えた蒼士の誕生日。
蒼士が仕事に行っている間に買い出しから仕込みを進めていく。
途中、用事を済ませてケーキを買いに行き、ホールではなくショートケーキを買った。
和食にも合うシャンパンも調べて調達しておいた。
今日は緊急の患者が運ばれて来ない限りは定時で上がれるだろう。
時間を逆算して料理を仕上げ、テーブルコーディネートも頑張った。
二人で過ごす最初で最後の誕生日。
プレゼントは、きっと蒼士があっと驚くだろう。
「蒼士、改めて、誕生日おめでとう」
帰ってきた蒼士を迎え入れる。
「懐かしい匂いがする」
「おばあちゃんとよく作ってたメニューにしたんだ。直ぐに乾杯できる?」
「腹ペコだ。直ぐに着替えてくる」
美澪の額にキスを落とし、着替えに行っている間に全ての料理を盛り付けた。
誕生日っぽいかと言われると、純和風の料理は違うかもしれないが、二人にとっては思い出の食事。
だし巻き卵も、あの頃より幾分も上達している。
「あのね、プレゼントなんだけど」
ご飯を食べ終わった後で切り出す。
蒼士は「気遣わなくていいと言ったのに」と言ったが、そうではないと美澪は言った。
「プレゼント……っていうか、報告があるんだ」
今日、貰ってきたばかりの母子手帳を差し出す。蒼士は瞠目とし、手帳と美澪を交互に見詰めた。
「美澪……これは……」
「赤ちゃん。いるって。少し前に分かってたんだけどね。今日言いたくて。昼間に手帳もらいに行ってたんだ」
喜んでくれるか不安もあった。けれど美澪は、初めて蒼士の眸に涙を見た。
「美澪……ありがとう……体、一層大事にしてくれ」
「来年は、家族でお祝いしようね」
「今から楽しみだ」
「明日は、いよいよ入籍だね」
「美澪と家族になれるだけでも嬉しいのに、更に幸せを連れてきてくれるなんて」
蒼士はシャンパンくらいでは酔わない。
けれど酔っているのかと思うほど、今夜は泣き上戸だ。
美澪ももらい泣きをして、新しい命を一緒に歓迎した。