王子様はガラスの靴を拾わない
第1章

変わり果てた国

『ママー!パパー!こっちきてー!』

 早くお花畑に行こうよ!

 でも、ママとパパは私を先へ進ませないように前へ出た。

『ママ、パパ……?』

『エマ、あなたはあっちだよ。』

ママが私を押す。

体がふわっと浮いた。

足元を見ると、地面はなかった。

『こっちに来るのはまだ早いよ。』

『次は、もっと後に来るんだぞ?』

『え……?なんで!?』


「ママ、パパ!!」

叫んだ瞬間、肺に空気が流れ込んだ。

あ、れ?私、さっき崖から落ちて……

……違う、私は刺されたんだ。

あの時、死んだんじゃなかったの……?

あたりは薄暗かった。

どこかの洞窟……?

「大丈夫ですか?」

「王子様……!?」

振り返ると王子様がいた。

薄汚れた豪華な服を着ているが、胸元が赤く染まっている。

「あの、王子様!かばっていただきありがとうございました……!それで、ここはどこですか?」

一拍置いて、

「すみません。ここがどこか、はっきりとは……。
目が覚めた時には、すでにこの場所でした。」

と、困ったように微笑んだ。

けれど、パッと明るい笑顔になって言った。

「一旦外に出てみましょうか。」


 私たちは明るい方を目指して歩いた。

「何があるかわからないので後ろからついてきてください。」

「わかりました。ありがとうございます。」

その会話をしてから2分くらい経った頃だった。

「――グギャァ……ッ」

という音が洞窟の外からした。

 王子様が私の前に手を出し、懐の剣に手を伸ばしている。

こんな音、一度も聞いたことがない……。

「僕が、見てきます。ここで待っててもらえますか?」

 王子様は優しい目をして言った。

けれど、

「私も、行きます!」

これ以上かばわれるわけにはいかない。

「……」

心配そうに私を見る。

 でも、私の気持ちが伝わったのか

「決して、無茶しないでくださいね。」

と、行くのを許可してくれた。

 1歩、2歩と光に近づいていく。

「そろそろです。」

いよいよ洞窟から出るー……。

「え……?」

青い空を悠々と飛ぶ鳥。

ではなく、紫色の空を、小説などでしか見ないドラゴンが飛んでいた。

遠くに見えていた青い海は、赤色だった。

そして、なにより1番目が行くのは、

国のシンボルの城の代わりに遠くの空高くに浮かぶ大きな禍々しい城だ。

 見間違い、だよね……?

 目をこすってみる。

でも、さっき見たものと全く一緒だった。

「どういう、ことでしょうか……?」

王子様は一瞬だけ言葉を切り、息を整えてから口を開いた。

「……分かりません。ですが、街の人に聞くのが早そうですね。」

「王子様ー」

 その時、背中がゾワッとした。

「――グゥゥ……」

 茂みの奥から、さっきよりも、ずっと近い音がした。

何か、来る……?

王子様が私の前に出る。

「グオォォォ!!!」

凄まじいおたけびとともに、クマに似た大きな生き物が現れた。
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