色褪せて、着色して。~黒薔薇編~
 おさえきれない感情は。
 サンゴさんの言葉で、ついに溢れだしてしまった。
「おいっ、なんで泣くんんだ!?」

 私を見たサンゴさんが大声をあげた。
 カイくんは冷静にタオルをすっと私に差し出した。
「俺が不敬罪になる!」
「なりません。勝手に・・・泣いているだ・・・け」
 ぼたぼた溢れ出る涙は止まらなかった。
 カイくんは、黙って背中をさすってくれる。
「なんで、みんな。私のそばから居なくなるん…ですか?」
 げほげほと咳き込んで。
 カイくんがくれたタオルで涙を拭っても。
 涙は止まらなかった。
「どうして、せっかく仲良く・・・」
 話していながら。
 これは、完全に自分のエゴだと気づいた。
 目的があって、皆。次のステージに行くというのに。
 どうして、私は素直に喜べないのだろう。

 サンゴさんは黙り込んだ。
 後ろにいるバニラとトペニも黙っている。
 深呼吸しようとするが、鼻が詰まって。うまく呼吸ができない。
「みんな・・・私のそばからいなくなる・・・仲良くなると離れていく」
 こんなことを言っても困るだけだとわかっているのに。
 私は手を拳にして、床をばんばん叩いた。

「…あー。どうしてこういうときに、あんたの旦那がいないかねえ」

 サンゴさんがぽつりと言った。
「お姫さんよ。あんま、男の前で泣くな。すべての男が全うな奴ってわけじゃねえからな」
 本当に何を言っているのか。
 化粧が落ちて、ぐっちゃぐちゃになるから醜い顔を見せるなということなのか。
「お姫さんが悲しくて泣くのは、もう会えないかと思うからだろ? それは違う」
「…セリくんやキキョウくんも同じこと言ってました」
 会おうと思えば、また会える。
 でも…私はこの限られた場所から、動くことは許されない。

「電話があるし。手紙だってある。俺はあんまり筆まめじゃねえけど。カイが書くから心配すんな。それに、俺はいつだってこの村に出入りできるんだ」
 じゃあ、カイくんは会えないってことじゃないか。

 荒んだ心が辿り着いた言葉だったけど。
 口には出せなかった。
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