色褪せて、着色して。~黒薔薇編~
 知っていたことなのに。
 言われると、頭が真っ白になる。
 ふわっとよろけそうになるのを。なんとかふんばる。
「今日は、挨拶に来ました」
「お世話になりました」
 出会った頃は、少年って感じだったのに。
 気づかないうちに大人になっている。
 2人の顔をぼんやりと見ることしか出来ない。
「こちらこそ、よそから来たわたくしたちに、こんなに親切にして頂いて・・・」
 何も話さない私の代わりに。
 バニラが深々と頭を下げた。
 セリくんとキキョウくんは「わー」と急に慌てた。
「不敬罪になるから、やめてください」
 思わず「何で?」と口に出してしまう。

「本当に僕たちはマヒル様とバニラさんに救われたんです」
「こんな綺麗な人と出逢えて、幸せな時間でした」
 2人が頭を下げる。
「私、何もしてないよ?」
 絞り出た言葉に。
 2人は「え?」と声を漏らした。
「2人は親切にしてくれた。雇用主であるユキ様から酷い事言われても、仕事の時間を削って私を助けてくれた。普段も、親切にしてくれた。太陽様と喧嘩したときは愚痴を聴いてくれた。トペニやスズメの相手をしてくれた・・・」
 泣いちゃ駄目だ。
 上を向いて、涙をこらえる。

「マヒル様。見た目以上に自己評価が低いと思います」

 この国では珍しいアースアイの持ち主であるキキョウくんが言った。
 結局のところ、キキョウくんとセリくんがどうしてこの村にやって来たのかは知らない。
 キキョウくんは私を見て笑った。
「感謝は、素直に受け取ってください。僕たちは貴女に…バニラさんに救われたんです」
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