完璧美人の私が恋したのは、眼鏡オタクのSEでした
 ——やがて、智也は部屋を出ていった。

 ドアが閉まる音。
 里美は、すっと表情を変えた。

 ベッドに腰掛けたまま、
 スマートフォンを手に取る。

 数回のコール。

 『……どうだった』

 低い、男の声。

 「プレゼントしたわ」

 里美は、淡々と言う。

 「動画、見てたって」
 『そうか』

 短い返事。

 「会社のパソコンで、
  昼休みに、だって」

 電話の向こうで、
 男が小さく息を吐く。

 『……上出来だ』

 里美は、
 口元だけで笑った。

 「でしょ?」

 通話を切り、
 スマートフォンを置く。

 静かな部屋。
 里美は、
 何もなかったかのように、
 ベッドに横たわった。

 ——歯車は、
 確かに、
 静かに回り始めていた。
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