完璧美人の私が恋したのは、眼鏡オタクのSEでした

14. 消えた優希

 その頃――。
 里桜のスマートフォンが、短く震えた。

 画面に浮かんだ名前を見た瞬間、
 面倒だと心が縮む。
 (……智也)

 出たくない。
 でも、嫌な予感が勝ってしまって、
 里桜は通話ボタンを押した。

 「……なに」

 『お前の会社さ』

 智也の声は、妙に軽い。

 『ハッカーにやられたんだろ? 
  ニュースになる?』

 里桜の背中に、冷たいものが走った。

 「……なんで知ってるの」

 『わかるだろ。
  噂ってすぐに出回るんだよ』

 笑っている。
 まるで他人事みたいに。
 里桜は、思わず声が強くなる。

 「私のせいじゃないから、
  あんたのせいで犯人と
  疑われたんだから、最悪!」

 「それに、もう対策してるし」
 「いま、私の彼――
  優希が中心になって動いてるから」

 『……へえ?彼氏いるんだ?』
 『……どうせ間抜けな彼氏だろ?』

 智也が、間の抜けた声を出した。
 里桜は、苛立ちが一気に込み上げる。

 「もう電話しないで
  こっちは忙しいの」
 「……ほんと、しつこい!」

 そう言い捨てて、通話を切った。
 スマホを握りしめたまま、
 里桜は深く息を吐く。
 (……なんなの、今さら)
 (私の生活に入ってこないで)

 その瞬間。
 胸の奥で、
 別の不安がうっすらと形になる。
 (……“優希”って言っちゃった
  まあ良いか、智也よりずっと
  素晴らしい人です~)
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