危険すぎる恋に、落ちてしまいました。番外編2

番外編1.

無事に結婚式を終えた夜。

黒薔薇学園の面々は、ネクタイを緩め、ドレスを少しラフにして、二次会会場へと流れ込んでいた。

――場所は、まさかのカラオケ。

「……なんで二次会がカラオケなんだよ」

ソファに深く腰掛け、グラスを片手にぼそっと呟く椿に、美羽はくすっと笑って隣に座る。

「みんなでワイワイしたかったんだもん!!ね、楽しそうでしょ?」

ネオンの光が、綺麗に大人びた美羽をやわらかく照らす。

その首元には、あの日の雪の結晶のネックレスが、今夜も静かに輝いていた。

「美羽が楽しいなら、それでいいけどな」

椿はそう言って、カクテルを一口あおる。

その瞬間――

ガラッ!!
カラオケルームのドアが、勢いよく開いた。

「美羽お姉ちゃーーーん!!!!!」

「……え?」

振り向いた美羽の視界いっぱいに飛び込んできたのは、満面の笑みと勢いそのままの人物。

「鈴ちゃん!?」

「遅くなってごめんね!!ほんとにごめんねぇ!!」

次の瞬間、ふたりは勢いよく抱き合っていた。

「会いたかったぁ~!」

「私も!!鈴ちゃん来てくれてありがとう!!」

その横で、椿が腕を組んでじとっとした目を向ける。

「……おせぇぞ、鈴」

「しょうがないでしょ!!司法試験だったんだからぁ!!」

ぷっと頬を膨らませる鈴に、
「え、椿の妹ちゃんって弁護士目指してんの?!」

遼が目を丸くする。

「えぐくない?将来最強じゃん」

「もちろんよ?!」

鈴は胸を張り、にやりと笑った。

「もし美羽お姉ちゃんとお兄ちゃんが喧嘩して、調停離婚とかになったら、私がお兄ちゃんをこてんぱんに――」
「お前なぁ!!」

椿が即座に鈴の頭をこつんと小突く。

「縁起でもねぇこと言うな!」
「いったぁ!!」

鈴は涙目になりながら頭を押さえる。

「この賢い細胞が死んだらどうすんのよ!!お兄ちゃんのバカ!!」

「ちょっと~!喧嘩しないの、二人とも~!」

美羽が慌てて仲裁に入ると、

「よーし!!」

悠真がマイクを握りしめ、立ち上がった。

「そんなわけで!!二次会はカラオケ大会でーす!!」
「パチパチパチー!」
「ドンドン!パフパフ~!」

なぜか効果音まで完璧だ。

「カラオケって新鮮ですね!」

碧が拳を握る。

「筋肉を生かして頑張ります!」

「……筋肉は関係ないだろ、声帯だろ」

玲央が即ツッコミを入れる。

「じゃあ私、遼くんとデュエットする~!」

莉子が照れながら手を挙げ、
「お、おう……」
遼は少し照れつつも、満更でもなさそうだ。

「僕は美羽ちゃんのために歌うよ~!」

悠真がウィンクを飛ばすと、
「だったら、音外したら減点だからね?」

秋人が爽やかに笑う。

そんな騒がしさの中、椿はグラスを持ったままソファに沈んでいた。

「俺はパス。観客席な」

「えー、新郎なのに?!」

美羽が振り返る。

「酒入ってるし」

実際、椿の頬はほんのり赤い。

「ええ!椿くん、もう飲んでるの?!大丈夫?」

「余裕だ」

そう言った次の瞬間、

「ちょっとまったぁ!!椿~~!!」

悠真がマイクを向けて迫ってきた。

「ここに、来たからには!歌わないのはダメだぞ!!僕と点数勝負だ!!」

「……上等だコラ」

完全にスイッチが入った椿は、立ち上がる。

「歌ってやろうじゃねぇか」

「ちょっと椿くん!?!」

美羽が慌てるが、もう遅い。
結果――椿は無駄に低音が効いたバラードを完璧に歌い上げ、点数はなぜか98点。

美羽は、うっとりして顔を赤くして固まっている。
(椿くんの、歌声…やばいんだけど!!)

「なんでこんな上手いんだ……!!
僕の方が、気持ちこもってるのにぃ~!!」

悠真が泣いて崩れ落ちる。
二次会は、笑って、歌って、酔ってあっという間に終わった。



おひらきになり、帰り際。

「椿くん、飲みすぎだよ~?」
美羽が椿の肩を支えると、
「うるせぇ……美羽は……俺のだ……」
完全に意味不明な惚気が飛び出す。

「はいはいはい」

鈴がため息混じりに笑う。

「美羽お姉ちゃん、私も送ろうか?」

「ありがとう。でも大丈夫よ」

美羽は微笑んだ。

「今日は来てくれてありがとう、鈴ちゃん!ほんと嬉しかったよ。」

「うん!お兄ちゃんと幸せになってね!!」

その横では、
「美羽ちゃ~ん!だいすきだぁ~!」

泣きながら叫ぶ悠真を、碧が背負っている。

「感情が高ぶると、涙腺と筋肉が……!」

「同時に反応しなくていいから」

遼は、酔って呂律が回らない莉子を抱えながら、
「美羽ちゃん、莉子の事だけど…まだ報告させてね。」と照れくさそうに言った。

「うん、莉子をよろしくね」

最後に、玲央と碧が静かに言った。

「幸せになってくれ」

「うん!ありがとう、玲央くん!」

美羽は、胸いっぱいの笑顔で頷いた。
皆が帰り、夜風の中で椿がふっと立ち止まる。

「……楽しかったな」

「うん」

美羽は椿の手を握る。

「こうしてみんなに囲まれてるの、すごく幸せ」

椿は照れ隠しに視線を逸らしながら、

「……一生離す気、ねぇから」

美羽は小さく笑って、ぎゅっと握り返した。
夜空に浮かぶ月は、騒がしくて、あたたかい二人の未来を静かに照らしていた。



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