突然のラブストーリーの中で誰よりも貴方だけを想います

春風の吹く日暮れ


温かい日差しに包まれて起床する。
彼女からのメッセージも届いている。
「おはよう美智也くん!今日はいい天気だね!」
「うん。そうだね」
あれから一週間経った。
最初は慣れなかったけどだんだんと絆が深まってる事が実感出来る。
人と関わるのがこんなに楽しくて幸せだった事に驚いている。
「案外悪くないな…」
僕はそう呟く。
最初は不安だったけどその不安な心を彼女の笑顔がいとも簡単に吹き飛ばしてくれた。
ヒンヤリしてる制服の袖に腕を通す。
家を出ると彼女が家の前にいる。
「美智也くん!おはようございます」
彼女の笑顔は生き生きと輝いている。
僕にまでその笑顔を分けてくれる。
「おはよう…」
「美智也くんは今日も元気そうだね」
「君のおかげだよ」
「むぅ…」
彼女はなぜか分からないけど拗ねてる。
僕は理由がわからずに彼女に問いかける。
「え?どうしたの?」
「名前で呼んでください…」
びっくりするほど意外な答えであった。
「まだ…馴れ馴れしいんじゃ…」
「名前で、呼んでください」
断固と彼女のした様子に僕は負けてしまう。
「椛……さんのおかげです……」
恥ずかしくて声が口の中で籠ってしまう。
「フフ…」
この様子に上機嫌になって彼女は鼻歌を謳う
朝の日差しが木漏れ日を通して降り注ぎ彼女を照らす。
「そういえばそろそろ文化祭だね!」
「あっ……そうだったね」
彼女といる日々が楽しくて文化祭のことなど忘れていた。
「凄く楽しみだなぁ……」
「僕は……普通かな…」
彼女は僕の言葉に信じられない様に首を傾げる。
「え?あ……そうなんだね」
「嫌いではないけど」
曖昧な返事しか出来ない自分に嫌気が差す。
「でも僕が楽しみなのは君の事を知れる事だよ」
「え?!そ、そうなんだ…………嬉しい…よ」
めずらしく動揺して恥ずかしがる彼女に思わず笑い出してしまう。
彼女は僕が笑ってる姿を見て先ほどの気恥ずかしい彼女の表情は無くなって彼女も声を出して笑い出す。
また君の事が知りたいと思ってしまう。
でも、どこまで知りたいのかそれが分からない。
「美智也くん?あの?!大丈夫?」
「あ!ごめん!少し考え事してた」
「ふぅん…でもなにか相談あるならなんでも言ってくださいね!いつでも側にいて寄り添うので」
彼女の頼もしい言葉に僕はニッコリと笑う。
「ありがとう」 
気づけば学校に着いていた。
教室に入ると窓の外の景色が目に映る。
いつもより鮮明に美しく輝いて見える。
「わぁ…今日も海綺麗だね」
いつもの景色なのに今日は特別綺麗に見えてしまう。
「うん…僕もそう思う」
ふと彼女の瞳を見つめる。
その瞳から溢れ出す感情に全て飲まれていく。
「うん?どうしたの…」
こちらの目線に気づいたのか彼女は僕の事を見つ
め返してる。
「あ…ごめん…嫌だったよね…」
僕はゆっくりと目線を逸らす。
突然彼女が僕の手を握る。
突然の出来事に彼女に目を向ける。
「嫌とか無いから。むしろもっと私を見て」
彼女の表情から本音で話してる事が感じ取れる。
僕が彼女を見つめる事で嬉しそうに微笑む姿に心が溶けて今にも散ってしまうほど儚く脆い感情が生まれてしまった。
「私も君だけを見てるからね」
そんな事を言われたら勘違いだってしてしまう
僕は深く考えるのをやめた。
チャイムが鳴って彼女は自分の席に戻る。
隣の席にいる彼女は授業中もこちらをチラチラこちらを見つめてくる。
僕は小声で注意する。
「あまりチラチラこちらも観ないでほしいな……その…気になるから…」
彼女はキョトンとした表情をしてすぐニッコリと笑う。
「君だけ特別だよ…」
甘く囁かれた言葉には愛情が込められて重たく僕の心に突き刺さる。
その後淀みない時間が一刻と過ぎてゆく。
休み時間になると彼女はいきなり僕の膝に座る
太陽の光が眩しくて彼女の表情が見えない。
「え?ちょ…近いよ…」
人目が気になるので急いで離れようとするが彼女はそれを拒むように僕の首に手を回して抱きついてくる。
「いいじゃん…少しだけ…」
突然の出来事に周りの人から冷ややかな目線を向けられてると思っていたが案外そうでもなかった。
むしろ羨ましそうに見つめる人がほとんどだった。
それでも僕は恥ずかしくて彼女を少し押し返す。
この抵抗に彼女は少しムッとしてさらに力を込めて抱きついてくる。
「美智也くん、少しだけだから…あと1分だけ…」
本当かな?
そう心の中で思いながら彼女から目を逸らす。
彼女は僕の首筋に顔を埋めていて恥ずかしくて今にも離れたい気持ちでいっぱいだ。
一分ぐらい経つと彼女は渋々離れる。
その時彼女は閃いたように口を開く。
「そうだ!屋上行こ!あそこなら誰もいないよ」
断ってもきっと彼女は無理やりにでもこちらに関わってくるだろう。
それならまだ人目がない方がまだ気が楽だ。
「誰もいないならいいけど……」
「なら早く行こ!」
彼女は僕の手を引いて屋上に急いでで向かう。
古びたドアを開くと。美しくの一言では表せれない青空と海が見える。
「着いた!わぁ………綺麗…」
この景色に彼女は見惚れてる
屋上は一応管理されていて転落防止の柵やベンチが設置されてる。それでもわざわざこの屋上に来る生徒は1人もいない。
屋上から見える絶景は夏の終わりを示すかのように佇む入道雲が夏の終わりの風景に調和していて空虚な空を彩っている。
「見て!あの入道雲モクモクしてて凄く美味しそうだね!」
彼女の純粋な反応に思わず笑ってまう
「確かに美味しそうだね」
僕の答えに満足したのかニッコリと笑って彼女がベンチに座る。
こっちに来てと催促するかのように彼女は自分の膝をポンポンと優しく叩いてる。
「膝枕しますよ!」
僕は驚いて言葉が出ない。
でもあまり…そんな事はしたくないので申し訳なさそうに断る。
「え?……でもそうゆうのは恋人とかになってからする事じゃないの?」
彼女の口元は笑みで溢れている。 
「いずれ美智也くんとは恋人になるので……」
そんな不確かな事に期待したくない。
「それでもだめなものはだめなの」
彼女は拗ねたように頬を膨らませてる。
「そうですか……なら隣にいてくれるだけでいいです…それ以上は何も求めませんし…」
「それなら…隣に失礼させてもらうよ」
僕は少し彼女と間隔を開けて座ったつもりだったけど彼女は自ら僕との距離を縮めてくる。気づけば手が触れ合っていた。
「近いって……もう少し距離とろうよ」
僕は思わず身を引く。なんでそんなに近づきたいのか僕には理解出来ない。
「やだ。近くにいて。寂しいから…」
僕の腕を掴んで手を絡める
「仕方ないな…でも…なんで…」
「前も言ったでしょ…美智也くんは特別だって…それに…もう離れたくない…本当に大切な人なんだよ心の底からそう思ってるよ」
つぶらな瞳で話す彼女には嘘など心のどこにもにもなさそうだった。
「なら…いいけど…」
安心出来るし、信頼もまだ…浅いけど確かな土台は出来始めている。
「え!本当!?嬉しい……」
彼女は僕の手をさらに力強く指の隙間なく絡める
「もっと仲良くしようね」
「うん…よろしくね。でも人前ではあまりくっつかないでほしい」
「なんでぇ………むぅ仕方ないですね……その分二人きりの時は沢山甘えますよ!」
むしろそっちの方が変な噂が出ずに済むから楽だ。
「二人きりなら…いいよ」
「あれぇ…美智也くん顔赤くなってるよ。ドキドキしてるの?」
僕は急いで手で顔を隠す。
「別に!少しだけだから…」
「可愛い…」
彼女のうっとりした表情に僕まで顔が熱くなる。
「別に可愛くないだろ…」
僕の言葉に彼女は涙を出しながら笑い出す
「可愛いよ。いつもは凛としてカッコよくて孤高な感じするけど。案外ピュアな一面もあってギャップがあるなって」
そんな事を平然と言える彼女に僕は恥ずかしくてなにもいえなくなる。
僕の無言を肯定だと受け取ったのか両手で僕の右手を握りしめる。
そしてチャイムが鳴り彼女と、2人で教室に戻る。
クラスメイトはこの光景に慣れたのか気づけば何も言わなくなっていった。
太陽に照らされる彼女は少しだけ特別に見えた。
そして数日後文化祭の準備がスタートした。
みんな賑やかに楽しそうに笑顔で準備をしている。でも僕はこの空気に馴染めずにいた。
僕はみんなと同じように笑い合うことが出来ないから無言でコツコツ作業を続けるだけだった。
ちなみに僕のクラスの出し物は演劇らしい。
まぁ凝った演出とか演技は演劇部のみんなに任せればいいし一番地味な小物作りを徹底することにした。
一人空き教室で黙々と小物作りをしてると誰かの足音が聞こえた。
目線を上げると教室の入り口にいる。
吹雪菘《ふぶき、すずな》同じクラスの女子だった
僕はどうしたらいいかわからずにただ彼女を見つめるだけだった。
「ねぇ…手伝うよ」
吹き通る風が彼女の白い髪を揺らす。
「いいけど…地味な作業だよ」
「地味でもいいの。君の側にいれるならいい…」
彼女は僕の隣に座って作業を始める。最初は慣れなかったのか時間が掛かっていたが僕がコツを教えるとスラスラと作業をこなしていた。
彼女は理解力と手の器用さは昔から人並み以上優れている。
「ねぇ…飽きた…少し話しよ」
でも集中力がいまひとつである。
「そうだね。僕も少し疲れたし休憩しようかな」
時計をふと見ると1時間半も経っていた。案外時間の進みが早かった。
「君はよくこんなに集中できるよね…」
「そうかな?」
「うん…君が集中してて私が集中してないように見えるけど1時間も小物作りしてたら普通は疲れるよ」
彼女の言葉に僕は首を傾げる
そんなに大したとこではないのに。僕はただしなければならない事を静かにしてるだけ。
「ねぇ…そういえばさ…一つ気になることがあっね………君はなんで最近みんなと話したり笑ったりしなくなったの?」
突然の質問に僕は困惑する。いつもクールで周りには興味無さそうな彼女の口から出る言葉では到底思えなかったからである。
「それは…僕が周りの空気に合わないかなって」
僕は適当に言い訳をしてなんとか誤魔化そうとする。
彼女は不思議そうに首を傾げる。
「へぇ……でも君は案外ギャップがあって可愛いと思うけどね…」
彼女の言葉にさらに困惑して言葉が思いつかなくなる。
「それに…彼女といる時はあんなに可愛い表情するのにね…」
「え………なんで知ってるの?」
僕はびっくりしてポカンと口を開けている。
なぜ彼女との関係を知っているのだろうか。
でもなんとなく噂が知れ渡っているのは承知の上であった。
それでも教室とかで少しくっつき過ぎたかもしれない。
彼女は僕の言動を見てお腹を抱えて笑い出す。
「アハハ!だってぇ…君さ…周りから見てすっごい分かりやすいよ。それに2人きりで話してたり手をつないでたりしてるの私知ってるから…」
彼女は嫉妬なのどんな感情か分からない様子でこちらを見つめてくる。
僕はその圧倒的なオーラに僕は怯まずに彼女を見つめ返す。
「相変わらず強いね…君は」
彼女はだんだん距離を詰めてきて僕の頬に手を伸ばしてくる。
僕は後退りするが壁に阻まれて逃げ場を失う。
カーテンの隙間から照らされる彼女は僕を愛おしそうに見つめてる。
「ねぇ…君は私の事――」
彼女が僕の頬に手を伸ばした瞬間に突然後ろから声が空き教室に響く。
「え……何してるの?」
後ろを振り向くと椛さんが息を切らしてドアに手をついて呼吸を整えてる。
「あら…来ちゃいましたね…ようやく二人きりになれたのに…」
椛さんは僕に近づいて彼女から守るように僕を抱きしめる。
「なにをしてたの?」
彼女は不敵な笑みを作りながら不気味な空気を漂わせる。
「彼のお手伝いですよ、それに貴方とお話もしたいですし一緒にしませんか?」
彼女の提案に椛さんは警戒を少し解いて了承する。
隙間風がカーテンや彼女達の髪を揺らす。黙々と作業するなかでやっぱり先に根を上げたのは吹雪さんであった
「疲れたぁ…休憩しようよ…」
「そうだね…少しだけ休憩しよっか…」
昼下がりの日差しが教室を照らす
吹雪さんは猫みたいに体を伸ばしている。椛さんは僕にぴったりくっついてる。
気まずい沈黙を突き破るように吹雪さんが話をきり出す
「2人はどんな関係なの?いつもこんな感じなの?」
「友達だよ…」
僕の答えに椛さんは少し不満そうは表情をするが渋々納得したように頷く。
「……まぁそうゆう事にしておくね。そろそろ暗くなるし。先に帰るね」
吹雪さんは微笑みながら教室を後にする。 
時計を見ると4時になっていた。
「ねぇ…私たちも帰ろっか…」
「うん…そうだね…」
僕は小物を作り終えて空き教室のロッカーの中で保管する。
「一緒に帰ろ…」
彼女から手を繋ぐことは当たり前なのにいつもより温かく感じた。
「今日は少し寄り道しよ!」
彼女の何気ない提案に僕はドキッとする。
肌寒い風が吹いてるはずなのに体が酷く火照っていた。
「寄り道、そうだね…しよっか…行きたい場所とかある?」
彼女は頭を押さえながら必死に考えている。そんな姿も可愛くて思わずニヤけてしまう。
「そうだ!公園に行こ!」
案外ありきたりな場所だけど彼女の側にいれることに特別を感じる。
「公園?君らしいね…」
夕暮れが街を照らしている。歩く度彼女の足音しか聞こえない。まるで二人だけの世界になったようだ。
急な坂道を登った先には桜が道に沿って植えられている散歩道があって公園とは思えない広場が目に映る。その先にはこじんまりとした展望台があった。
「誰もいないね…」
彼女は少し寂しそうに葉がほとんど落ちてしまった桜を眺めてる
風が吹いて落ち葉が音を立てる
公園は静寂に包まれていて一つ一つの物音が鮮明に聞こえる。
彼女と散歩道を歩いている。ただ散歩してるだけなのに彼女といるだけで安心するのにモヤモヤする感情があふれ出す。
「ねぇ…あの展望台行ってみよ…」
「高い所苦手じゃないの?」
「大丈夫だよ!」
彼女は髪を触る。彼女の仕草に少し違和感を覚える。何か思い出せそうなのに思い出せなくて少し苛立ちを感じてしまう。
階段を登って最初に映った景色は、幻想的に光る街だった。でもその景色に見惚れている彼女の横顔に僕は見惚れている。彼女の瞳は儚く今にも消えてしまいそうだった
「綺麗だね」
そんな一言でも胸が高まってしまう。夜風が吹いて寒いはずなのに胸が奥が熱くなってしまう。この感情の答えは…一目惚れだった
彼女を好きになっていた。この景色なんかより彼女の全てが彩って見える
「あの…」
僕の声は風に吹かれて消えてしまいそうであった。
「うん?なぁに?」
いつもならなんとも思わない彼女の仕草や声相槌に胸がときめいてドキドキする。僕は目を逸らしてしまう。
「その……綺麗な景色ですね…」
「フフ…綺麗だよね…」
彼女の声が少し震えてる事に今の僕は気づかなかった。 
この空気で好きなど言えるほどの度胸が僕にはなかった。再び彼女の瞳を見つめてしまう。彼女にはこの景色がどう映っているのか、僕の事をどう思っているのか、全て知りたくなる。
吹雪さんに彼女との関係は友達と言った時彼女は不満そうな表情だった…なら同じ気持ちなのかな
「もう暗いし寒いからそろそろ帰ろうよ」
「うん。そうだね」
僕から彼女の手を握る、彼女は少し驚いた様子だったが柔らかい表情で繋がれた右手を見つめるだけだった。夜の静寂が辺りを包み手の中には確かな愛情が溢れている。
多分僕も彼女もこの静寂が妙に心地良かった気がする。
家に帰って僕は渋々手を洗う。そして部屋に籠り枕に顔を埋める。羞恥心と純粋な喜びが心の中で交差する。でも彼女が嫌がってなくて安心した。
嫌われてない事は確かになった。
もしあの時好きって言ったら彼女はどんな反応したのだろうか……気になって眠れない
今晩は孤独の夜になりそうだった
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