冷徹CEOと、一夜から始まる溺愛契約
「信じてくれ。俺は、絶対にお前を傷つけたりしない」
必死な表情。湊は、確実に何かを隠している。
それが、痛いほど伝わってきた。
◇
パーティーが終わり、帰り道。
湊が運転する車内は、重い沈黙に包まれていた。
暖房が効いているはずなのに、指先が凍りつくように冷たい。
窓外に流れるイルミネーションの光が、今の私には酷く虚しく見える。
「紗良」
湊が口を開く。
「さっきのこと、本当にすまなかった」
「いえ……」
「鳳華恋は、俺の会社を狙っている女性だ」
湊が、ハンドルを握りしめる。
「彼女の父親が経営する商社と取引はしているが、個人的な関係は何もない」
その言葉に、肩の荷がわずかに下りる。
「……そうなんですね」
「ああ。だが、彼女は俺に好意を持っているのか、時々ああやって接触してくる」
湊が私に視線を移す。
「今日も、お前を傷つけるために近づいてきたんだ」
「あの、三年前のことって……」
気になった私はつい言いかけて、口をつぐむ。
聞いてはいけない気がした。
「それは……」
湊が、言葉に詰まる。
「今は、まだ話せない。だが、必ず話す。時が来たら」
また、その言葉。時が来たらって、それはいつなんだろう。
「信じて、待っていてくれるか?」
湊の瞳が、私を見つめる。その目には、苦しみと決意が宿っていた。
「……はい」
私は、小さく頷くしかなかった。
湊を信じたい。けれど、私の心には消えない毒のような疑念が、静かに広がり始めていた。
三年前、父を絶望の淵に突き落としたあの倒産劇に、もし――湊が関わっていたとしたら。
私は、それでも彼の手を握り続けていられるのだろうか。