冷徹CEOと、一夜から始まる溺愛契約

「信じてくれ。俺は、絶対にお前を傷つけたりしない」

必死な表情。湊は、確実に何かを隠している。

それが、痛いほど伝わってきた。

◇

パーティーが終わり、帰り道。

湊が運転する車内は、重い沈黙に包まれていた。

暖房が効いているはずなのに、指先が凍りつくように冷たい。

窓外に流れるイルミネーションの光が、今の私には酷く虚しく見える。

「紗良」

湊が口を開く。

「さっきのこと、本当にすまなかった」

「いえ……」

「鳳華恋は、俺の会社を狙っている女性だ」

湊が、ハンドルを握りしめる。

「彼女の父親が経営する商社と取引はしているが、個人的な関係は何もない」

その言葉に、肩の荷がわずかに下りる。

「……そうなんですね」

「ああ。だが、彼女は俺に好意を持っているのか、時々ああやって接触してくる」

湊が私に視線を移す。

「今日も、お前を傷つけるために近づいてきたんだ」

「あの、三年前のことって……」

気になった私はつい言いかけて、口をつぐむ。

聞いてはいけない気がした。

「それは……」

湊が、言葉に詰まる。

「今は、まだ話せない。だが、必ず話す。時が来たら」

また、その言葉。時が来たらって、それはいつなんだろう。

「信じて、待っていてくれるか?」

湊の瞳が、私を見つめる。その目には、苦しみと決意が宿っていた。

「……はい」

私は、小さく頷くしかなかった。

湊を信じたい。けれど、私の心には消えない毒のような疑念が、静かに広がり始めていた。

三年前、父を絶望の淵に突き落としたあの倒産劇に、もし――湊が関わっていたとしたら。

私は、それでも彼の手を握り続けていられるのだろうか。
< 83 / 149 >

この作品をシェア

pagetop