冷徹CEOと、一夜から始まる溺愛契約

「信じてくれ。俺は、絶対にお前を傷つけたりしない」

必死な表情。湊は、確実に何かを隠している。

それが、痛いほど伝わってきた。



パーティーが終わり、帰り道。

湊が運転する車内は、重い沈黙に包まれていた。

暖房が効いているはずなのに、指先が凍りつくように冷たい。

窓外に流れるイルミネーションの光が、今の私には酷く虚しく見える。

「紗良」

湊が口を開く。

「さっきのこと、本当にすまなかった」

「いえ……」

「鳳華恋は、俺の会社を狙っている女性だ」

湊が、ハンドルを握りしめる。

「彼女の父親が経営する商社と取引はしているが、個人的な関係は何もない」

その言葉に、肩の荷がわずかに下りる。

「……そうなんですね」

「ああ。だが、彼女は俺に好意を持っているのか、時々ああやって接触してくる」

湊が私に視線を移す。

「今日も、お前を傷つけるために近づいてきたんだ」

「あの、三年前のことって……」

気になった私はつい言いかけて、口をつぐむ。

聞いてはいけない気がした。

「それは……」

湊が、言葉に詰まる。

「今は、まだ話せない。だが、必ず話す。時が来たら」

また、その言葉。時が来たらって、それはいつなんだろう。

「信じて、待っていてくれるか?」

湊の瞳が、私を見つめる。その目には、苦しみと決意が宿っていた。

「……はい」

私は、小さく頷くしかなかった。

湊を信じたい。けれど、私の心には消えない毒のような疑念が、静かに広がり始めていた。

三年前、父を絶望の淵に突き落としたあの倒産劇に、もし――湊が関わっていたとしたら。

私は、それでも彼の手を握り続けていられるのだろうか。
< 83 / 149 >

この作品をシェア

pagetop