恋に臆病な私と恋を知らなかった御曹司の距離が、ゼロになるまで
 ジュエリーショップへ足を踏み入れた充輝は、ガラスケースの中で光り輝く指輪たちを眺めていくと、

「いらっしゃいませ」

 そんな充輝に店員が微笑みながら近付いて来た。

「あの、指輪を探しているんですが……」

 充輝はケースを見つめながら言葉を続けていく。

「婚約指輪……という程大げさじゃないんですが、それと同じくらい大切な約束の意味を込めたものをと思っていまして」

 店員は一瞬だけ事情を察したように微笑み、

「でしたら、こちらはいかがでしょう」

 と、シンプルなリングをいくつか並べて見せる。

 派手ではないけれど見るたびに大切な気持ちを思い出せるような、そんな指輪を贈りたい充輝は余計な装飾のない細身のプラチナリングに目を止めた。

 一粒だけ小さな石が控えめに輝くそのリングを見ながら、

(……来海に似合いそうだ)

 そう思った充輝は、

「すみません、この指輪でお願いします」

 迷うことなくそのリングに決めると、会計を済ませてラッピングされた小さな箱を受け取った。

 それをポケットの奥にしまうと充輝は再び急ぎ足でカフェへと戻って行く。

 カフェ内へ入り、来海が充輝の姿を見つけてふっと微笑んだ。

「早かったね」
「うん、大した内容じゃ無かったから」

 何事もなかったように席に戻った充輝は内心ほっと息を吐いた。

(バレてないな……)

 その後、二人はゆっくりとコーヒーを飲んでからカフェを出て駐車場へ戻っていく。

 ドライブがてら車を走らせていた充輝はハンドルを握ったままふと思い付いたように口を開く。

「明日は遊園地でも行かない? 遠出なんて滅多にする機会ないし、そういうところに行くのも新鮮でしょ」

 その言葉に来海はパッと表情を明るくした。

「いいね、行きたい!」

 いつになく無邪気な笑顔で即答すると少し照れたように続ける。

「遊園地なんてすごく久しぶりだし、充輝と行けたらいいなって思ってたから嬉しい」

 どうやら来海は前から遊園地に行きたいと思っていたらしく、来海の嬉しそうな様子に充輝も思わず笑みを浮かべていた。
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