恋に臆病な私と恋を知らなかった御曹司の距離が、ゼロになるまで【完】
「……それにね、さっき……」
「ん?」
「充輝が……私のいない未来は考えてないって社長たちの前で言ってくれて……」

 来海は一旦言葉を区切ると、少しだけ照れたように視線を落としながら続けた。

「……すごく、嬉しかったよ」

 その言葉に充輝は一瞬だけ目を細め、

「本当のことだし、隠す必要も無いからね」

 そう、何でもないことのように言ったのを見て来海は微笑みを浮かべた。

「さてと、それじゃあ送るね」
「うん、ありがとう」

 車のエンジンを掛けた充輝は来海のアパートへ向けて車を発進させたけれど、暫く進んだところで、

「……来海」
「ん?」
「今日、さ……やっぱり俺の部屋、来ない?」
「え?」

 突然の提案に来海は目を瞬かせ、

「明日も仕事だから、必要なら一度来海の部屋に寄るけど……」
「えっと……」

 少し考えるように視線を彷徨わせてから、

「充輝の部屋に、少し着替えとか置かせてもらってるから……寄らなくても、平気」

 そう答えた。

「分かった」

 来海の返答を聞いた充輝は短く頷くとハンドルを切り、進行方向を変えて自身のマンションへと向かって行く。

 そして、もう少しでマンションへ着くという頃、

「来海」
「ん?」

 充輝は前を見たまま、ゆっくりと口を開く。

「親父にも来海とのことは認めてもらえたし…………来海さえ良ければ……なんだけど、さ……近いうちに、一緒に住まない?」
「え……?」

 思いがけない言葉に来海は息を呑む。

「今回のことで、これまで以上に来海と離れたくないって思ったし、ずっと一緒に居たいって気持ちが更に強くなった」

 そして、ほんの少しだけ口元を緩め、

「それにさ、指輪をプレゼントした時、言ったでしょ? 俺が戻ってきたその時は……もう二度と離さないって」
「……充輝……」

 その言葉に来海は自分の薬指に光る指輪を見つめ、あの時のシーンを脳裏に浮かべていく。

 そして、マンションに着いた車が駐車場に停められたその時、二人は互いに視線を合わせた。

「……どうかな?」

 再度確認する充輝に来海は、

「……うん……私も、離れたくない……ずっと一緒がいいから……一緒に、住みたい」

 充輝の申し出を真っ直ぐに受け入れた。

 沢山悩み、不安や悲しみを乗り越えた二人のこの先に広がる未来は、明るい希望に満ちていた。
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