恋に臆病な私と恋を知らなかった御曹司の距離が、ゼロになるまで
「……ッあ、……ん、」

 思わず零れてしまった大きな声に来海自身が一番驚いていた。

 身体が正直に反応してしまったことが恥ずかしくて、頬から首筋まで一気に熱が広がっていく。

「……っ、や……」

 充輝はそんな来海の反応を見つつも胸の膨らみを優しく揉みながら再び唇を奪っていく。

「……っん、……ふぁ、」

 胸を刺激されながら激しいキスをされ続けた来海の身体からは力が抜けていき、それに気付いた充輝は唇を離すと、無言のまま来海の着ていたトップスの裾を持ち上げた。

 充輝の理性が「やめろ」と囁く一方で、もっと来海を知りたい、触れたいという思いが勝ってしまい、その手を止めることが出来なくなった。

「あ……羽柴、くん……」

 恥ずかしさに耐えきれず伸ばした手は、すぐに優しく包み込まれ、

「――名前で呼んで?」

 囁くような声と逃がさない視線に見つめられた来海は一瞬息を呑み、それから観念したように小さく口を開いた。

「……みつ……き……」

 頬を真っ赤に染めながら『充輝』と呟くように名前を呼んだ。

 その一言で充輝の表情がわずかに崩れ、名前で呼ばれるだけでこんなにも胸が満たされるのかと彼自身が驚いていた。

「来海――好きだよ」

 掴んでいた手を離して想いを確かめるように再び唇を重ねた充輝は、捲り上げたトップスの裾から来海の素肌に手を滑り込ませていった。

「――っん、……っ、」

 唇を塞がれ、下着の上から胸を刺激されている来海は声を思うように出せず、手で充輝の服をきゅっと掴む。

 すると、

「――っあ、」

 唇を離した充輝は来海が付けている淡いピンク色のブラジャーのホックを器用に外して胸を露わにする。

「……やっ、……はずか、……しい……」

 今さらだと分かっていても言わずにはいられなかった言葉。

 充輝はそれを否定せずに来海の耳元へと顔を寄せ、

「……恥ずかしいなら、止める?」

 試すようでいて選択を委ねる問いかけをする。

 その声はどこまでも優しく、無理強いをしないと静かに伝えているようだった。

 だけど、ここまで来てこのまま終わり――なんてことが無いことくらい来海は分かっているし、何よりも、さっき口にした言葉は拒絶や止めて欲しいという意味では無い。

「……やだ、……やめ、ないで……っ」

 充輝になら全てを曝け出しても良い、充輝になら全てを委ねられる。

 その覚悟でここへ来た来海は恥ずかしさから視線を逸らしたまま、消え入りそうな声で自分の素直な気持ちを伝えた。
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