恋に臆病な私と恋を知らなかった御曹司の距離が、ゼロになるまで
「怖くない?」

 そう尋ねる充輝に来海は一瞬だけ言葉に詰まり、それから小さく笑ってみせた。

「……大丈夫だよ」

 その答えを確かめるように充輝はそっと指先を伸ばすと来海の頬に触れる。

 触れられた瞬間、じんわりと熱が広がり来海の頬はみるみる赤く染まっていった。

 大丈夫と口では言ったものの心の奥まで見透かされているような気がして、来海は思わず視線を逸らしてしまうけれど、

「――来海」

 ふいに名前を呼ばれ、その声に導かれるように逸らしたはずの視線が充輝へ戻ってしまった。

「……そんな目で、見ないで」

 初めて名前を呼ばれた驚きと、近すぎる距離。

 その両方に耐えきれず、来海は拒むような言葉を口にする。

「見られるの、嫌?」
「……だって、恥ずかしい……」
「そうやって恥ずかしがるところも、可愛いよ」
「やだ……そんなこと、言わないで……」

 困ったように視線を伏せる来海があまりにも愛おしくて充輝は自然と顔を近づける。

 そして壊れ物に触れるように、そっと唇を重ねた。

「……ん、……はっ……」

 角度を変え、何度も重ねられるキス。

 その合間に零れる小さな吐息に充輝の欲が駆り立てられる。

 大切にしたいという想いと、抑えきれない欲望。

 その狭間で揺れながら充輝の指先が無意識に来海の胸元へ伸びていき――

「んんっ……」

 不意の感覚に、来海が小さく声を漏らした。

 その声に我に返った充輝は、はっとしたように動きを止めるとすぐに来海の表情を確かめた。

「……ごめん。嫌だった?」
「……ううん……、その……びっくりしただけ……」

 そう答える来海に安堵の表情を見せた充輝は再び彼女へ口付けると、

「――ッんん、」

 強引に舌を割入れ、更に深く、激しいキスをしながら充輝の手はもう一度胸元へ伸びていき、服の上から優しく撫でるように胸の膨らみを手で包み込んでいく。
< 54 / 103 >

この作品をシェア

pagetop