血の契りより、あなたを選ぶ
4:久瀬恒一side
葬儀の余韻は、夜になっても消えなかった。
雨は止み、街はいつもの顔を取り戻している。
それでも、ポケットの中だけが異物感を訴えていた。
煙草と、ライター。
机の上に並べる。
どちらも、派手さはない。
だが、長く使われてきたもの特有の重みがある。
「……鷹宮修司、か」
低く、名前を口にする。
筋の通った男。
無駄を嫌い、約束を破らない。
裏の世界では、それだけで生き残れないが、
それでも“信用”だけは積み上げていた男だ。
だからこそ、
今日の葬儀には顔を出した。
義理だけじゃない。
恩もある。
——あの男には、一度、救われている。
「久瀬さん」
部下に名前を呼ばれ、思考を切り上げる。
「分かったことだけ言え」
「亡くなった鷹宮修司は、
鷹宮義一組長の直付き護衛です」
やはりな。
鷹宮義一。
その名を知らない人間は、この世界にいない。
古い。
堅い。
無茶はしないが、筋を通す。
修司が、
あの男のそばにいた理由が、はっきりした。
「女の方は?」
「身内です。
ただし……」
部下が言葉を選ぶ。
「“娘”だと」
久瀬恒一は、黙った。
喫煙所。
雨。
形見の煙草を吸う横顔。
泣かなかった理由。
怯まなかった理由。
——そういうことか。
「名前は」
「まだ出ていません。
表に出ないよう、徹底されてます」
当然だ。
鷹宮義一が、
娘を“表”に置くはずがない。
「……深入りするな」
部下は一瞬、迷ってから頷いた。
「はい」
部屋に静寂が戻る。
恒一は、ライターを手に取った。
修司の癖が残る、角の欠け。
あの女が、
これを持っていた理由が、すべて繋がる。
——堅気じゃない。
——だが、敵でもなかった。
問題は、もっと根深い。
鷹宮義一の娘。
触れた瞬間、
組織的に“越えてはいけない線”。
恒一は、煙草をしまい、静かに立ち上がった。
「……厄介だな」
それでも。
返さないという選択肢は、
最初からなかった。
雨は止み、街はいつもの顔を取り戻している。
それでも、ポケットの中だけが異物感を訴えていた。
煙草と、ライター。
机の上に並べる。
どちらも、派手さはない。
だが、長く使われてきたもの特有の重みがある。
「……鷹宮修司、か」
低く、名前を口にする。
筋の通った男。
無駄を嫌い、約束を破らない。
裏の世界では、それだけで生き残れないが、
それでも“信用”だけは積み上げていた男だ。
だからこそ、
今日の葬儀には顔を出した。
義理だけじゃない。
恩もある。
——あの男には、一度、救われている。
「久瀬さん」
部下に名前を呼ばれ、思考を切り上げる。
「分かったことだけ言え」
「亡くなった鷹宮修司は、
鷹宮義一組長の直付き護衛です」
やはりな。
鷹宮義一。
その名を知らない人間は、この世界にいない。
古い。
堅い。
無茶はしないが、筋を通す。
修司が、
あの男のそばにいた理由が、はっきりした。
「女の方は?」
「身内です。
ただし……」
部下が言葉を選ぶ。
「“娘”だと」
久瀬恒一は、黙った。
喫煙所。
雨。
形見の煙草を吸う横顔。
泣かなかった理由。
怯まなかった理由。
——そういうことか。
「名前は」
「まだ出ていません。
表に出ないよう、徹底されてます」
当然だ。
鷹宮義一が、
娘を“表”に置くはずがない。
「……深入りするな」
部下は一瞬、迷ってから頷いた。
「はい」
部屋に静寂が戻る。
恒一は、ライターを手に取った。
修司の癖が残る、角の欠け。
あの女が、
これを持っていた理由が、すべて繋がる。
——堅気じゃない。
——だが、敵でもなかった。
問題は、もっと根深い。
鷹宮義一の娘。
触れた瞬間、
組織的に“越えてはいけない線”。
恒一は、煙草をしまい、静かに立ち上がった。
「……厄介だな」
それでも。
返さないという選択肢は、
最初からなかった。