Before Dawn.
その言葉を引き金に、弾き出されたようにそいつの元へ駆け寄った。
…不思議だ。全身痛かったはずなのに何故か今は痛みを感じない。
上に跨って胸ぐらを掴んだ。
「……今、なんつった?」
「“ざまぁみろ”」
「は?」
「お前のこと、殺そうとしたけど、逆にあの男が死んでよかったわ」
「なに、」
「お前のそんな顔見れるなんてな。ざまぁみろ」
ざまぁみろ、ざまぁみろ。
壊れたおもちゃみたいにそう繰り返している。
「あの男はお前が殺したようなもんだ」
鈍器で頭を殴られたみたいな感覚だった。
その後の事はあまり覚えていない。
依織の声に我に返った後、目の前に広がっていたのは息をしているのかしていないのか分からない血だらけの男。
両手なんて痺れて感覚がない。
覚えているのは、ピクリとも動かなくなった慎之介と初めて見たなんとも言えない表情をした依織だった。