Before Dawn.
02:White nights.
マドロミ
…あぁまるで映画を見ているようだ。
黒い額縁には囲われた写真の中ではにかんでいるのはついこの間まで私の隣で笑っていたはずの慎之介。
「………」
着慣れない喪服に身を包んで雨の中、私は立ちすくんでいた。
これ以上、足が進まない。
「……雨音」
周りは全員しくしくと泣いているのに、私は何故か涙ひとつ出なかった。
…最低だ。
「は、おい雨音。どこ行くんだよ」
依織がうるさい。
グッと掴まれた手を振り払ってその顔を見た。
…涙目じゃん。
似合わない珍しいその表情に戸惑った。
口調はいつもと変わらないのに声が震えている。
…そうか。慎は私の彼氏だけれど、依織にとっては家族も同然の親友だったんだ。
不安になるのも当然だ。
「……ごめん。車呼んで」
「なんで?つかもう帰んのかよ、まだ…」
「車、呼んでほしい」
少しの間の後、渋々呼んでくれたタクシーで私はいつもの溜まり場へと帰った。
「…お嬢さん知ってる?ここ、この間乱闘があったらしくて死傷者も出てるってテレビで流れてたんだよ。ほんと、物騒な世の中だよなぁ…」
「いくらですか?」
「え?」
「お金、いくらですか?」
「あ、あぁ…」
言われた通りの金額を支払って、何か言いたげな運転手の顔を無視して車から降りた。